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ア・ラ・カルト

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親愛なる―


 兄貴? 兄貴って、どの? パーシー?! あいつはとんでもない石頭さ。金づちで叩いたら金づちのほうが壊れると思うね、なぁ、ジョージ。
 冗談が通じる日がきたら世紀末だな。
 兄弟の中で一番異質さ。何から何まで正反対。あいつ、もしかして種が違うんじゃないか?
 おい、下品だぜ。
 だってほんとのことだろ。まだロンのほうが可愛げがある、バカだけどな。なのに奴ときたら弱虫で泣き虫だったくせに兄貴面したがってさ、うっとうしいのなんのって・・・・・・今も変わんないか。
 あいつ、虫が苦手なんだ。今でも親指の先っぽくらいの虫で顔をひきつらせてるもんな。子供の頃はそれだけで半泣きだよ。フレッド、あれ、いつだったっけ。
 何がだよ
 あのすごい毛虫の。
 ああ、5歳くらいじゃないか?
 あのときは珍しく三人で遊んでたんだよな。
 パーシーは面倒見だけは良かったからな。
 なんでそうなったか覚えてないけど、フレッドが庭の木に登ってパーシーと俺がその木を下で揺すってたんだ。
 そうそう。ゆらゆら揺れるのが面白くってさ。わざと落ちるーとか言ってパーシーをからかったりして。あいつ、子供のころから超心配性なの。
 夏前だったから突然ドバーッて毛虫が大量に落ちてきたんだ。もちろんフレッドが一番毛虫だらけになったけど、俺とパーシーもそうとうな数を頭からかぶった。
 あれは悲惨だった。
 パーシーは硬直してたな。ププッ、今でも覚えてる、あの間抜け面。目ぇ開けたまま気絶したかと思った。そのくせ青い顔してブルブル震える手で俺の毛虫を取ってんの。自分は毛虫だらけでだぜ、服の中にも入ってたのにな。
 俺もあのときは半泣きだったね、チビりそうだった。毛虫がうじゃうじゃ身体中を這っててさぁ。急いで木から降りてったら、パーシーが服を脱がせて毛虫を取ってくれた。そのときも奴は腕やら頭やらに毛虫をくっつけたままだったな。
 俺とフレッドの毛虫を全部とってぶっ倒れた。気絶したんだ。
 よくあそこまで我慢したよな。
 あいつ、俺らには年上だって意識が過剰にあるからな。すぐにロンやジニーが生まれたし、面倒は良く見てもらった。
 まぁ、そんなわけで俺ら双子はパーシーには頭が上がらない。
 クソいまいましくても、クソうっとうしくても、クソ石頭でもね。
 結局、奴が俺らの一番の理解者だってことさ。
 ・・・・・・だな。

 愛してるぜ、パーシー。
 
作品名:ア・ラ・カルト 作家名:かける