可愛いでしょう?
うふふ、と薄く微笑めば彼の頬にさあっと朱色が走った。素直な子は好き。反応が手に取るように分かって大変可愛らしい。それを見て私の、白亜の胸も高鳴った。あんたたち、結構お似合いだと私、思うわよ。
「私、このままじゃ消えてしまうんですもの」
「それ、って…どういう…?」
じり、と壁際まで追い詰めてしまえばもう逃げ場なんて無い。立てられた膝にそっと手を置けば、びくりと彼の肩が跳ねた。少女らしい優しい力で足を割り、するりとその間に入り込めば、借り物のこの体の奥からどくどくと酷く煩い音がした。血潮が巡る音。今まで私には無縁だった音。
「仁くんは優しいから、私が消えてしまうのは可哀想だと思って下さるでしょう?」
わざとらしく体をすりつけてみせれば、彼の鼓動の音まで聞こえるような気がした。とすれば、白亜の鼓動だって向こうには筒抜けなのかも知れない。彼が、それを私の鼓動の音と勘違いする可能性だってある。それはまずい。非常にまずい。相手に余裕を与えるような、自分の弱みを見せるような真似、私は絶対にしたくない。
ならばもうここは引けぬ。制服の上から彼の内腿をゆるゆると撫で、自分の足と器用に絡める。スラックスとこの白い足のコントラスト、我ながらなかなかに色っぽいと思うのだけど、どうかしら。
「ねえ、私、可愛いでしょう?」
ひゅっ、と耳の近くで小さく息を呑む音がして、にっこり綺麗に微笑んであげたが最後、少しずつ意識が遠のいていくのを感じた。
そして私は、私だけの心の中で嘲笑う。白亜、あんた可愛いけれど馬鹿な子ね。何も私に嫉妬しなくたって良いじゃない。