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the Name of Bandits

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「名前を付けよう!」
 そういいだしたのは自分たちの中で一番チビの元気な駆け出しだった。
「名前?」
「そう、名前。いつまでも『俺たち集団』じゃカッコつかないだろ?」
「いや、そんな呼び方誰もしてないけど…。」
 ブラッドにはいまいちピンとこない。だいたいが何となく成り行きで一緒にいるだけの集団に名前もくそも無いではないか。
「だーかーらっっされちゃう前にこっちが名前決めて名乗るんだって!」
「そんなもんか?」
「リーダーがそんなんでどうすんだよ。もっとしゃきっとしないと!」
「リーダー?」
 もしかしてそれは自分のことか、ときょとんとして指をさすブラッドに彼はあきれてため息をついた。
「…………ここにいる奴らの過半数はあんたが拾ってきたんだぞ?他に誰がリーダーやるんだよ。」
 言われてみればその通りだ。
 実際10人ちょっとの集団の中の、実に8人は彼が各地で拾って育てていた身よりのない孤児たちで。自分たちは実際には集団と言うよりは家族に近い関係だった。
 彼らにとって自分は親に当たるのだ。中には自分よりも年格好の上の奴らもいたのだが。
「だからさ。あんたがこんなに自覚無いのも絶対名前が無いせいだと思うんだよね!無いよりはあった方がいいって絶対。というか俺もう考えちゃったもんね!ブラッドに異論がないならこれで決定。」
 妙に名前を付けたがると思ったら、何か思いついたからだったらしい。
 要するに付けたい名前を思いついたから、使ってみたくなったということだろうか。
「なんてつける気なんだ?」
 とりあえずつきあってみる気になった養い親に向かって、自信満々に返ってきた答えはこうだった。
「ゴーレム山賊団!かっこいいだろ?」
「……どこから思いついたんだそれ?」
「山賊ってなんかかっこいいしー。ゴーレムってのがまた強そうでいいだろ。」
 …………それはちょっとどうだろう。と、子供の無邪気な笑顔に向かって口に出せる勇者はその場には存在しなかった。
「ま、こんな山の中の穴蔵で生活してるあたり山賊ってのもあながち否定できないしな…。」
 こうして後にバルクウェイの英雄となり、永遠に歴史に刻み込まれることになる団の名は子供の思いつきによってあっさり決定してしまったのだ。




 後になって、実は名前自体は何でも良かったと年老いた僧侶は白状した。
 ただ、自分を置いて流れて行かない仲間たちのよりどころに、自分と共にある証として、しっかりと形を与えてやりたかったのだと。
「名前というものは大事ものなのだぞ?名前があって、それを呼んでくれる人がいて初めて物事というものは存在するのだからな。」
 しかしあの名前はちょっとひどかったのう。
 照れくさそうに笑った彼のくしゃっとした皺だらけの顔が何よりも愛しいものとして脳裏に刻まれた日のことだった。




 そうして数十年。
 今また、新たな使命を背負ってブラッドの元を去る仲間から一つの提案がもたらされた。
「いい機会だし、名前を改めたら?いつまでもゴーレム山賊団もないじゃない。」
「……そうだな。いい機会かもしれないな。」
 初めて、みんなで生きることの喜びを与えてくれた老僧呂はこの世を去った。
 自分の判断ミスで命を奪ってしまった彼に、捧げる言葉なんて何も思いつかなかったけれど。
 彼が与えてくれた最初の名を墓碑銘に刻んで往くのもいいだろう。



 ゴーレム山賊団はいつだってウォルラス・ファリオンとともにあったのだから。
作品名:the Name of Bandits 作家名:らい@