君と並んで
隣にいる奴を意識しすぎて体温が上昇して、心臓がどくどくとうるさい。
「――燐」
「え、なっ、何だ?」
突然かけられた声に驚いて視線をずらすと、少しだけ元気のない表情のしえみがいた。
「迷惑かけちゃって、ごめんね?」
「べ、別にこれくらい……」
俺達がこうして……所謂、相合い傘で下校しているのは、傘を忘れたしえみを送っていくようにと雪男に言われたから。
まあもちろん、言われるまでもなく送っていくけどさ。
傘を忘れたこいつを雨の中で一人で帰せられるわけないだろ。
「でも燐、さっきからむすっとして何も喋らないから……怒ってるのかなって」
単に緊張だとかいろいろな葛藤と戦っていただけだ。
だからそれは勘違いだって言いたいけど、何と言えばいいものなのか。
「別に怒ってねえから気にすんなよ」
安心させたくて笑ってそう言ったけど、不意にしえみの肩と俺の肩がぶつかって、俺は不自然なまでにびくりと体を震わせてしまった。
「えっ、どうしたのっ」
「――っ」
ああ、馬鹿みたいだ。俺ばっかりこんなに意識してさ。
変な奴だし、ドジだし、泣き虫だし、いつも雪ちゃん雪ちゃんってうるさいし、でも……目も合わせられないくらいに、こんなにも胸が高鳴って。
「……なんでもねえよ」
隣にこいつがいるだけで、こんなにも暖かいなんてな。
END