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夢轍[6] 終わらぬ夢に、揺らぐ影ひとつ

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そうしてカーツは再び政府塔内へとその身を置くことを選んだ。役職と目的はやや変じたが、以前よりも待遇は良くなっている。イワン少佐は今では大煇石開発に携わる第一の責任者となり、カーツの直接の上官になっていた。イワンという人物個人に関しては、カーツは信頼を置いている。だからといって、イワンへの信頼そのままに上層部に対して同様のものは持ってはいない。リジャールという男は失脚したが、似たような人間は少なくはないのだ。結局、あの熱に浮かされたような改革で成しえたことといえば、あのつまらぬ男を失脚に追い込んだということだと思うと、そのために犠牲になった人間が存在していると思うと、ひどくばかばかしい事のように思えてならない時もあった。


 ラティス商会は以前から疑問視されていたストラタとの密約を暴かれ、力を失った。同時に保守派勢力が勢いを増し――それは間違いなくラティス商会が勢いを失ったからである、市民の間で頻発していたデモなども徐々に沈静化していった。そうして、一巡りの季節を経た頃には、この国が変革の熱に浮かされていたなどということは既に過去の出来事となり、ザヴェートの白と黒の混じった道を行き交う人々は相変わらず俯いたままだった。


 旧友マリクの行方は、杳として知れない。彼の消息を尋ねられた際、カーツははっきりとマリクは死んだと告げた。実際に、あの男は死んだのだ。自ら掲げた情熱を、自ら否定したその瞬間に、カーツが知るマリク・シザースという男は影になった。


 改革、変革を望んだあの季節は去った。それでも、カーツの中にはあの時抱いていた懸念も熱も、そのままに残っている。それだけは決して殺してはならぬと、殺さずに抱え続け、いつか必ず成すことが、その過程で犠牲になった幾多の人間の魂に対し、唯一真摯に向き合うための手段なのだ。