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【TOG】平行線の口づけ【リチャソフィ】

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幼い頃、僕が心を落ち着かせられる場所は一つしかなかった。そこは埃っぽくて少し暗くて、とてもじゃないけどいい環境とは言い難かった。でも、暖かい部屋やふかふかの清潔なベッドの中にいるより、ずっと心が休まる気がした。
そんな僕だけの秘密基地を彼女に教えたのはもうずいぶんと前になる。最近になって僕はようやく、一国の王としての業務や責任に慣れてきたところだったが、たまに何かにつまずいた時や心の休息が欲しい時、僕はこの秘密基地にこっそりとやって来る。
大抵の場合、僕はそこで一人の時間を過ごす。清潔ではない空気をゆっくりと吸って心を落ち着かせ、そして日常へと戻るだけ。
しかし時々、僕以外の訪問者に遭遇することがある。そんな時、彼女は笑顔でこう言う。
「どうしたの、リチャード?」
それから僕らは隣同士に座り、ささやかな会話を楽しむ。フォドラでの一件で少し大人びた彼女は、それ以前よりも感情の表現が豊かになった。そんな彼女の表情の変化を見ているだけで、大体の悩みは消え去ってしまう。
しかしたまに、それでは取れないような悩みが出現する。そんな時、彼女は僕の額にそっと口づけを落とす。何でも、彼女が不安を抱えていたとき、彼女の母親のような人が同じように彼女の額に口づけを落とした時、彼女の不安がたちまち消え去ったからだという。
最初に彼女が僕に対してその行為を行った時、僕はただ驚いて彼女の名前を呼ぶしかできなかった。けれどそれが何回か繰り返されるうちに僕にも余裕ができて、僕は口づけを落とした彼女の腕を引いて僕の腕の中に引き入れ、抱き締めるという習慣をつけるようになった。そしてしばらく経ってから身体を離してから二人で微笑みあい、そして軽くなった心のまま、お互いの居場所へと帰る。
それだけ。それ以上は決して求めない。
たとえ腕の中の熱に欲情し、本能ではその続きを求めていたとしても、僕はそれ以上を求めない。
いつまでもいつまでも、決して交わることのない思いを抱えて僕は言う。
「ありがとう、ソフィ。君がいてくれて嬉しいよ。」