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東方~宝涙仙~ 其の弐拾五(25)

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東方〜宝涙仙〜


「大丈夫ですよ。妹様も魔理沙さんも、この紅魔館も守りきって見せますから。あ、もちろん私自身も守りますよ?」



ー紅魔館エントランス付近階段・魔理沙vsシズマー

「おとなしく動くのをやめたほうが身の為ですよ。まぁ、動くのやめても串刺し…いや槍刺しにしますけどね」
足元の黒い影の領域に捕らわれた魔理沙は反撃はおろか下手に動くこともできなくなっている。
「もう最後の止めさしちゃいますよ?」
「わかったよ…私の負けだ…」
魔理沙は持っていたミニ八卦炉を天井に向けて投げ捨てた。彼女なりの降参の仕方なのだろう。
「では」
シズマが魔理沙の足元から影の槍を突きだそうとした瞬間、魔理沙は帽子を深く抑え身を屈めた。
「前も右も左も後ろもダメなら上があるんだぜ!」
勢いをつけて素早く跳躍した。それも先ほど同様に前に軽く飛ぶのではなく完全に上に。そして空中を舞うミニ八卦炉を捕まえる。
「縦に飛んだところで避ける事なんてできませんよ」
「誰が縦に飛ぶなんてルールを作ったんだ。少なくともアタシはそんなルール聞いたことがない!」
魔理沙にはわずかに届かず、影の槍はスカートを掠めることしかできなかった。
しかし冷静なシズマは魔理沙の着地するタイミングを窺っているようで、特に驚いた反応は示さない。着地する瞬間はどんな生物であろうと地面には一瞬でも着く。それに廊下ならまだしもこんなところで飛び回ろうものなら自由には動けず必ず隙ができる。
今まで将棋の師範代のように一手二手先を読んで来たシズマにとってジャンプして避けられるなど予想のうちであった。
「ははっ」
先読みが思い通りだったせいかシズマは一瞬ほど下を向いて鼻笑いをした。
しかしこの一瞬が限りなくチェックメイトに近いチェックのチェス盤を狂わせる。
顔を上げた時、目の前に魔理沙はいなかった。
「えっ!?」
予想外の展開に咄嗟に後ろを向いたが誰もいない。当たり360度を見まわしたが魔理沙の姿など見当たりはしなかった。
「影を探せば!そうだ影を探せばいいのよ」
急いで見渡すも近くに隠れれるような場所もなく、壁のでっぱりの裏に魔理沙が隠れていて影だけでているということもない。
「よく考えれば影なんて探す必要もないわね。あの人の影はすでに私が支配しているもの。ここから遠隔でも近接でも構わないから串刺しにしてしまえばいいのよ」
冷静な者ほど焦ると正気を保てなくなる。シズマは独り言をただただ言い放っているしかなかった。
「ふふ…ふふふ……私の支配した影の上にいるんでしょう?そうよ…そうに決まってるわ。影と本体が離れることなんて有りえないもの!」
手が震え汗が頬を伝いだす。
「はははは!死んでください魔理沙さん!私の支配した影の上で!!この鼠女がァァッ!!」
  ―無音で飛び出る影の槍。
    グサリという擬音は相応しくない生々しい貫通音。
「イ"ア"アアアァァァァァァッッッッ……!!!!」
   階段の踊り場で一人の少女が倒れた。
ストンという音を立ててもう一人の少女が上から落ちてくる。
「なんで……なんで……影を支配したのは私のはずなのにやられていたのは私だなんて………」
「体ごと貫くと死ぬから刺さるのは足だけにしてやったアタシに感謝してほしいぜ」
 地面に這いつくばる少女は納得いかない顔で、自分を見下ろす鼠女を見上げた。
「お前はもう戦闘不能だな。あと鼠女はナズーリンに言え、アタシは普通の魔法少女だ」
倒れたシズマを後にして魔理沙はフランドールを追いかけた。
  ―「まさか今日だけで2回もシャンデリアの上に乗るとはね」
 魔理沙は階段を降りて行った。


ー紅魔館廊下・美鈴側ー
 美鈴と魔理沙は手分けをしていた。魔理沙は階段方面へ、美鈴は下の階を担当した。エントランスで待ち合わせる約束だったのだが、向かう途中誰かの気配を感じたので気配の正体を探しているところである。
「おっかしいな、確かに気配はあったのに。レミリアお嬢様に気の形が近かった様な…」
気配の正体が遠ざかったのか、気配を見失ってしまった。気配の正体を探すのを諦め、集合場所へ向かうことにした。その時、どこかで壁の崩落する音が鳴った。
「今の音は!」
 気配とは違い聞き間違いなどあるはずもない、絶対的な崩落音。美鈴は音の鳴ったほうを目指そうとしたが足を止めた。今度こそ完全に気配を捉えた。しかも次第にその気配が大きくなり近づいてくる。まだ誰が放っている気なのかはわからない距離だが着実に近づいてはいるのだ。
「侵入者…ですかね」
敵であった時のことを考え気を溜め始めた。が、近づいてくる気配が敵でないことにすぐ気が付けたらしく、溜めた気を分散させる。
「美鈴ー!」
「妹様!」
近づいてくる気配の正体はフランドールだった。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「フランは大丈夫だけどね魔理沙が戦ってるの!フランは逃げろって…」
「魔理沙さんが!?…まさかさっきの崩落音は……」
「魔理沙なら負けないと思うけど……」
 美鈴は不安そうな表情で服を掴むフランドールの手を握った。
「大丈夫ですよ。妹様も魔理沙さんも、この紅魔館も守りきって見せますから。あ、もちろん私自身も守りますよ?」
美鈴の温かい表情がフランドールの不安を少し飛ばしたのか、フランドールの羽が今までよりすこし明るく輝いた。
「そうとなれば妹様!早くレミリアお嬢様と合流しましょう!」
「魔理沙はどうするの?」
「妹様を逃がして負けるなんてこと魔理沙さんはしませんよ」
 今日の美鈴はいつものように優しく、いつもより勇敢なようだ。
 
      ▼其の弐拾六(26)へ続く


〜あとがき〜
 「あとがき」ってつけると最終回っぽいですが最終回じゃありません。
このところ更新速度が不安定でしたがテスト週間も終わったことだし、更新速度安定させていこおうかと思ってます。
『東方宝涙仙 其の零』についてはきりのいいとこで挟むか、本作品が完結してから投稿するか迷ってます。
戦闘シーンを文字にするのは結構大変なんです(笑)
だから『零』は戦闘ものじゃないのにしようと思ってます。
今後とも『東方宝涙仙』の応援をよろしくお願いします。