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白と黒

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白い羽、黒い羽。
はらはらと舞って、ただただ、無為に落ちるだけのそれ。
自分と自分に纏わるあれこれについて考えようとした時、脳内に浮かぶのは白い光と暗い影。
いつもそうだ。
はらはらと舞う。
白と黒が混在して。
そして、辿り着きそうになった奥の情景を隠してしまう。
靄がかかったように、向こう側を透かしては見せない。

考えるのを拒否しているのは自分自身なのか、それとも何か別のものなのか。
時間だけはいくらでもあったはずの病院のベッドの上でも、どれだけ頭の奥から絞り出そうとしても、何にも辿り着けなかった。

どうやら、それまでの自分にとって、とても大切であったらしい彼。
そして、自分もとても大切に思われていたのだろうという事実。

幼い頃の夏祭り、二人ではしゃぎ回ったこと。
神社の境内に集まった虫を、朝早起きして人並みに採集なんてしては二人で飼っていたこと。
寺の掃除を手伝って、掻き集めた落ち葉で作った焼き芋の甘い味。
年上の自分が、定期考査のたびに勉強の面倒をみていたこと。
共有してきた、すべてのこと。
彼の語るすべてがどこかきらきらして、眩しいような気がした。

しかし、彼がそれらを取り戻そうと必死になればなるほど、「今のお前は偽物だ」と言われているようだった。

だって、何も覚えていないのだ。
どれだけそれが自分の経験した出来事だと言われても、今の自分には何も共感することができない。
空っぽの空洞をどれだけ必死に埋めようとしても、まるで穴の開いた容器のように、すべてが漏れ出てしまった。
共感することがない。
共有できない。
それなのに、彼は求め続けてくる。

苦しかった。
求めに応じられない自分が。

苦しかった。
責められているようで。

苦しかった。
彼の落胆した顔を見るのが。

苦しくて。




今日も来るのだろうか。
期待を宿しながら、希望を捨ててなるものかという意志を宿しながら、それでも今日もまた裏切られる落胆への恐怖をかすかに滲ませながら。

苦しい。
もういっそ、放っておいてくれればいいのに。
きっと、もう「彼の知っている自分」は死んでしまったのだ。
半年も昔に。
きっと、とっくの昔に、いなくなってしまったのだ。
早く諦めてくれればいいのに。
その方が、「彼の知っている自分」だって、きっと嬉しい。
こんな偽物にかかりきりになっているだなんて、彼を大切だと思っていた「自分」にとっては嫌に違いない。
そうだ、
きっと、





ああ、嫌だ。
目の前が黒くなる。
過去で埋められないのなら、いっそこの黒の羽で、自分の中が埋め尽くされてしまえばいいのに。






今日の書き出し/締めの一文 【 白い羽、黒い羽 】 
http://shindanmaker.com/231854 より
作品名:白と黒 作家名:くりの