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きっといつかはむくわれる

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 すきなのに。
 わめくだけわめき、泣くだけ泣き、飲むだけ飲んだ最後に吐き出したのはアルコールではなく告白だった。でも残念ながらその対象は俺ではなくて、俺のとなり、イギリスにはとなりのとなりになる、つまりアメリカにだった。といってもアメリカはついさっき来て、席に座りもしないで何事か一方的にしゃべった後去り際に明日の予定の確認をしていただけだ。
「じゃあ明日も十時に」
 バイ、という挨拶にイギリスのひとりごとは重なった。きついものばかり飲んでいたから暴れる体力も怒鳴る気力もアメリカを認識する能力も今のイギリスには欠けている。もごもごとつぶやいているだけだったからアメリカも無視していたのだろうが、その締めの言葉だけはやたらと明瞭に俺たちの鼓膜を破った。イギリスは顔を上げないでコップとこんにちはしたままだったが、きっと涙と鼻水でぐしょぐしょなんだろうと俺たちはわかっている。
「イギリス?」
 アメリカは青い目をしばたたかせた。中学生男子がはじめて告白を受けたみたいな幼い驚愕と戸惑いの顔がとても可愛い、可愛くて――まっかとはいかなかったけれど桃色くらいには染まり、返事のないイギリスを見つめた。寝たのかな、と俺が顔をのぞき込もうとしたとき、アメリカは、ごめん携帯が、とポケットを探るふりをして俺たちの後ろを駆けていった。
 俺は席を立つ。喧騒にまみれたバーを出て通りの左右を見渡すとアメリカはドアのすぐ脇で立ち尽くしていた。今度はまっかといっていい、ほんとうに、可愛かった。
「……あいつ酔ってるよ、アメリカ」
 口元を覆っていたてのひらが、肩が、横から見てもきれいに濡れているとわかる青が、知ってる、と賢明さを伝えてくる。アメリカの酔いを壊したくはなかったけれど、万一この子が無知で、台無しになってしまうことだけは避けたかった。
 でもアメリカはやっぱりバカじゃない。盲目的に頭が悪かったらよかったのにな。そうしたらイギリスのもと、今もあの草原で笑っていただろうに。
「わかってるんだ、フランス……でも」
 アメリカは唇からてのひらを離しひそやかに吐息する。ぽろりとおちる涙を、その手が受ける。
「うれしい……」
 他でもないこの俺の前にいるのに、泣いている子自身に涙を拭わせるなんて、あってはいけないことだ。俺はいつもみたいにやさしく、ちょっとだけ下心をこめて、抱き寄せて泣き止むまで慰めてあげるべきだった。
 でもできなかった。どうしようもなく子どもなアメリカは、それでも俺なんかよりはるかに気高く、うつくしく純粋な恋をしていた。だから俺はアメリカにさわれなかった。ただ、言葉とはうらはらにかなしそうに泣き続けるアメリカに、見とれることしかできなかった。