二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

クールダウン

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 全ての熱を解放し、ひっそりと静まり返った薄闇の中。フェリシアーノは全身の力を使い果たして、ぐったりと横たわっていた。

 まるで訓練で全力疾走した後みたい……心臓はドキドキしてるし、息だって苦しくって、まだハアハアいってる。体の力だって、全部抜けちゃって全然動けない。
 けど、訓練じゃこんな気持ちには絶対なれない。充足感っていうのか、満足感っていうのかな……苦しいのに、すごく気持ちいい。

 どうにか目だけをゆっくりと動かすと、隣にいるルートヴィッヒもまだ目を瞑って呼吸を整えようとしていた。

 体力自慢のルートだってそうなんだから、俺なんかそうなって当然だよね……
 そんなふうに思うと、まだ息苦しいのに、不思議と笑みがこぼれた。

 今ではもうすっかり慣れっこになって、初めの頃みたいな感激はないけれど、その後に毎回必ず訪れるこの時間は嫌いじゃない。
 さっきまでの痺れるような絶頂感とは反対に、体がゆっくりとクールダウンしていく。でもそれはいわゆる『白ける』とか『冷める』って感覚とは違う。
 さっきまでいた荒れ狂う海の表面を離れて、ゆっくりとしずかな水の底へ沈んでいくような感じだ。

 こぽこぽこぽこぽ……

 ちっちゃな空気の泡がゆっくりと青い海面へと上っていく。
 俺は海の柔らかな腕に抱かれて、ゆっくりと水の底へと沈んでいく。
 ゆっくり、ゆっくりと。

 波の上にいる間は大好きな人とずっと一緒だったけど、今はひとりだ。だけど、不思議と孤独感は感じない。
 いつも絶頂の時が来て、ジェットコースターみたいにそれが過ぎた瞬間は、このまま離れたくない、大好きな人とずっとひとつのままでいたいって思う。
 でもずっとそうしているわけにはいかない。
 仕方なくふたりが離れる時は『俺たちは今、こんなにひとつなのに、どうして引き裂かれなきゃならないの?なんで別々になってしまわないといけないんだろう』って、すごく残念に思うけど、
 いったん離れてしまうと、不思議と、
『ああ、そうじゃなかったんだ、これで良かったんだな』って思い出す。

 そっか……俺とルートとは、元々、別々のそれぞれ一人の人間だったんだって。

 人が聞いたら、変に思うかもしれないね。ルートだってきっとそう言うだろうな。
 でもね、俺には忘れられない言葉があるんだ。
 昔、大好きなひとと離ればなれになって、俺がひとりで泣いてたら、その人はこう言ってくれたよ。
『ひとはふたりいるから、ひとつになる喜びを味わうことができるんだよ。
 一度離れてから、またくっつくと、相手のことをもっと好きになる。
 そうやって離れては、くっつくたびに、その人が自分に取ってどれだけ大事な人か、確かめることができるんだ。
 それに、離ればなれになっても、縁があればまたきっと逢える。
 だから泣かないで、いつかきっとまた逢えるよ、諦めないで』
 って。
 俺はね、泣きながらその人にくっついたんだ。その人は俺のこと、抱きしめてくれたよ、一緒に泣きながらね。
 大丈夫、大丈夫だよって言いながら。
 その時、俺はその人のことが大好きなんだって思ったよ。
 ……うん、ずっと前から一緒にいたし、ずっと前から好きだったけど、また改めてその人のことが好きになったよ。

 フェリシアーノはくすりと笑った。
 ……恋人とか、そういうのじゃないけどね。
 ……え、その人は、今はどうしてるかって?
 うん、今も元気でいるよ。大好きな人と一緒だよ。
作品名:クールダウン 作家名:maki