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まんじゅう
まんじゅう
novelistID. 43064
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猫と子猫

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学校からの帰り道、鳴り響くケータイ。
聞こえる着信音は兄からの着信だということを廉造に教えた。
柔造からの連絡というのはそう多くはない。何か重要なことなのだろうか。
そう思いながら電話に出る。

「はいはい、柔兄?」
「今な、テレビで猫の特集やっててな」
「・・・・・・へ?」

しかし、柔造の口から出た言葉は思いがけないもので、つい気の抜けた声を返してしまった。

「猫は死に際を見せんでおらんようなる聞いて」
「あー俺も聞いたことあるなぁ。で?」
「そしたら急に子猫の声聞きたなってなぁ。子猫どこにおる?」
「しょうもな!そんなん子猫さんに直接電話すればええやん!」
「しょうもなくないわ!子猫に電話して出ぇへんからお前に電話しとるんやろ!」
「逆ギレ!?」

あまりのくだらなさに言えばキレられる始末。
一応俺も怪我人なんやけど。怒鳴ると肋骨響くんやけど。
言っても何もならないので心の中に留めておく。

「子猫さんは今病院やし、音消しとるんやないかなー?子猫さんそうゆうとこ気にしはるし、それで気づいてないんかも」
「そうか、子猫はまだ病院か」
「もう少しで退院は出来るみたいやけど」
「腕折れてもうたんやったな・・・子猫は頑張ったな」
「俺もあばら・・・」
「うっさいわ」
「酷!」

予想通り一蹴。可愛い弟のことはどうでもいいのか。

「これから病院行く予定やし、子猫さんに伝えとこか?」
「おう、頼むわ」





病院に着き、慣れた様子で子猫丸の病室に向かう。

「子猫さーん!・・・・・・ってあれ?」

勢い良くドアを開け病室に入るが、いつもの声が返ってこない。
よく見るとベッドには誰もいなかった。

「検査とかかなぁ・・・」

仕方なくベッド脇の椅子に腰掛ける。
ケータイをいじりつつ待ってはみたが子猫丸は帰ってこない。
ふと、柔造がしていた話を思い出した。

『猫は死に際を見せんでおらんようなる』

「はは、まさかぁ!」

子猫丸は死ぬほどの怪我ではないし、いくら名前に猫がついているからと言っても彼は人間だ。
そんなことあるわけがない。
しかし、どこか不安になるのは何故だろう。
もし彼がどこかに行ってしまったら。自分の前からいなくなってしまったら。
ガタンと大きな音をたてて立ち上がる。

「子猫さんを探しに行かんと・・・」

慌てて駆け出し扉を開けた。

「わぁ!」
「おっと!って、子猫さん!?」
「僕やけど・・・どうしたの志摩さん」

勢い良く出ていこうとした所に探そうとしていた人物がいて、ぶつかりそうになる寸前で堪える。
そして小さな子猫丸の体をぎゅうっと抱きしめた。

「子猫さん、良かった、戻ってきて!」
「え、なん?何やの?」

訳がわからず抱きしめられたままになっている子猫丸。
しかしすぐにここが病院の廊下であることに気付く。

「志摩さん、とりあえず中に入りましょ?」


「・・・つまり、僕がいなくなったんやないかと思った、と」
「せやって、柔兄があんな話するから・・・」
「僕猫は好きやけど猫ではないよ?」
「でも子猫さんは子猫さんやもん!」
「・・・よぉわからんけど、僕はここにいます」
「うん、良かった」

廉造にギュッと手を握られ頬を赤らめる子猫丸。
甘い空気が流れる中、廉造があっ、と声を上げる。

「そんで子猫さん、一体どこいってはったん?」
「えっと、柔造さんから着信あったみたいやからかけ直そう思って。ここじゃあれやし散歩ついでに外に・・・」
「な、なるほど・・・そらそうですわな・・・」

着信があったからかけ直した、至極最もな答えだ。
何故そのことに気がつかなかったのか。自分が情けない。
少し落ち込む廉造を知ってか知らずか、子猫丸が口を開く。

「志摩さん」
「何?子猫さん」
「僕はおらんようなったりせんよ」

廉造は思わず子猫丸を抱きしめた。
作品名:猫と子猫 作家名:まんじゅう