Telephone call
赤福
ベッドに寝転がり、就寝前に携帯電話を弄っているとふいになる着信音。
切原が好きな歌手の軽快なサウンドは、恋人の福士に選んでもらったものだ。
そう、つまりこれは福士さんからの着信音なわけで。
慌てて起き上がり、携帯を耳に当てる。
『あ、切は』
「もしもし!?福士さん!?!?」
『・・・声デケェよお前』
呆れつつも、少し柔らかい声色。
きっと電話の向こう側では優しく微笑む福士さんがいるんだろう。
あー、なんか顔がニヤける。
「だって、福士さんが電話くれるなんて思わなかったから」
『お、俺だってな、お前が選抜の合宿メンバーに選ばれたって聞いたら電話くらいするっつーの』
福士さんの言葉に、ニヤけていた顔の筋肉が引きつる。
「え?福士さん、知ってたんスか!?」
『いや、俺は知らなかったんだけど。堂本たちが言ってたんだよ』
あいつら俺も知らない情報をどっから仕入れてくるんだ?
ひとり言のように(実際ひとり言のつもりなんだろう)呟く福士さん。
何でもないことのように喋っているけど、オレには結構重要な問題なんですけど。
「そうか、銀華の人にも口止めするべきだった・・・」
がっくりと、文字通り項垂れる。
起き上がる気力もなくて、そのまま横向きにごろんと転がった。
もちろん携帯はしっかり耳に当てたままで。
『口止め?』
「・・・ホントは~、正式に選抜メンバーに選ばれてから報告しようと思ってたんスよ」
そう、オレの中では完璧な計画だった。
合宿の終わり、メンバーが発表されてから福士さんに電話して、「アメリカとの親善試合のメンバーに選ばれたんで試合見に来てくれません?」なんて福士さんを誘う。
そんで試合では相手チームに圧勝、オレのカッコいいところを存分に見てもらう、という素晴らしい計画で。
そのために普段揶揄ってくる先輩達全員に固く口止めして、これで完璧だと思ったのに。
まさか、銀華の人達からバレてしまうなんて。
恐るべし、銀華の情報網。
『何でだよ』
「だって万が一でも選抜落ちたら、かっこ悪いじゃないッスか」
『・・・お前でもそんなこと考えるんだな』
「そりゃあ、普段はそんなこと考えないけど」
家族にだって友人にだって、いつもは真っ先に知らせる。
受験の時だって、まだ受かってもいないのに周りに立海に行くんだと公言していた。
落ちることなんて考えてなかった。
福士さんのことだけだ。
らしくなく不安になったり、やけに緊張したり。
そんな風になってしまうのは。
でも、
「・・・ミチルのことに関しては別ッスよ」
『へぇ・・・ってオイ!お前今さりげなく名前で呼んだだろ!』
「いいじゃないッスか、減るもんでもないんだし」
『いや、減る!』
「えぇ?可愛いじゃないスか、ミチルちゃん」
『だから名前で呼ぶなって言ってんだろ!』
福士さんのことなら、そんなのも楽しいけどね。
作品名:Telephone call 作家名:まんじゅう