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赤ずきん -オオカミ視点-

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これは、森の奥で偶然出会ったオオカミと少女の必然の物語。



‥こんなのはいやだよ、

僕はいつか、君と‥‥


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ある日僕がいつものように森の中を歩いていると

森の一角、水仙やビオラなどの花がたくさん咲いているところで

赤いなにかを僕は見つけた。

ほんのすこし近づいて見てみると赤いずきんをかぶった少女が座って花を摘んでいた

‥僕はなんだかいやな予感がした。

とてもとてもいやな予感が、彼女をこれ以上見続けたらいけないような気が‥

次の日も彼女はこの場所で花を摘んでどこかへ向かっていた。

次の日も、また次の日も‥毎日ここへ来てはどこかへ向かった。

彼女がくればくるほど僕は気づかぬうちに彼女のことが気になっていた

けれど毎日彼女がくるたびに僕はいくつもの感情を殺そうとした。

彼女に会いたい。

彼女にふれたい。

彼女と、話したい‥

彼女を木の後ろで隠れて見ているうちにそうおもってしまう僕は小さく呟く

「僕みたいなやつが‥

僕みたいな狡いオオカミは‥

彼女のようなかよわい子とかかわりたいなんて‥

思っちゃいけない‥」

何度も繰り返したその言葉を今日も繰り返す。

「‥‥なんで、なんで僕はオオカミなんだよ‥」

次の日、僕はまたあの場所へ行って彼女をみてとしてすこし悲しくなった

‥あぁ、今日も君はこの道を通ってどこかへ向かうんだろう。

そして僕は、この木の後ろで君をみることしかできないのか‥

彼女は僕のことを気づいている。

そんなことに最近気がついた。

そして、彼女も僕と同じことを思っていることにも気がついた。

‥僕たちの想いは同じなのに、

視線を交えることもできない

言葉を交わすことだってできない。

ただただ、深いため息だけがこの静かな森に響いた

会えなくてもいいよ

ふれられなくてもいい

‥話すことができなくても、いいから

‥‥それでも、いいから‥

君がそこにいて僕がここにいるっていうことだけでいいから‥‥

こんな気持ちは初めてだ。

そしてこれは、“恋”というのだろう。

もしもそうでないというならば、僕は言葉がなくなったっていい‥

僕がどんなに考えても人間の君とオオカミの僕が一緒に幸せになれる方法が見つからない

でも君が来るたびに日に日に僕の気持ちは重くなる

会えなくてもいい

ふれられなくてもいい

話せなくてもいい、なんて‥

「嘘、だ‥‥」

白い息が漏れる

本当は君に会いたい

君の頬にふれたい

君と話したい。

でも‥

そうおもったってできないんだ

だって僕はオオカミなんだから‥‥!

どれだけ神様に願っても僕はオオカミのままなんだから‥

ある日僕は彼女のあとをついて彼女の向かう場所まで行った

そこは森の中にある小さな小屋で彼女はそこへはいって行った。

こっそりと中を覗くとそこにはおばあさんと彼女がいた。

彼女はそこにおばあさんと一緒に住みはじめたようで新しい椅子や机がおいてあった

夜になって帰ろうと思って歩を進めたら

彼女がすすりなく声が聞こえた

そのまま耳を澄ましていると

「あなたに会いたい‥」

そう呟く声が聞こえた

僕に聞こえているのが分かっているのか、そうではないのか

彼女は言葉を続ける

「‥あなたと、話したい

あなたに‥ふれたいよ‥‥」

ベッドでうつ伏せになったままの彼女はそのまま泣き続けた

「‥泣かないで‥」

僕は彼女のベッドの横にある窓に手を伸ばそうとした。

けれど最後まで手を伸ばせなかったのは‥

終わってしまうから。

手を伸ばして、彼女にふれたらそれで終わってしまう

僕と君がここにいるってことが、できなくなってしまうから

‥伸ばしかけた手が震えている

「‥僕は、君のことが好きだよ

‥愛しているよ‥‥。

泣いている君を、抱きしめてあげたいよ‥」

でも、

できないんだよ‥!

どんなにあがいたって、

どんなに神様に願ったって

爪も、牙だって消えることはないんだよ

僕がオオカミであることに変わりはないんだよ‥‥

だから‥

待ってる‥。

君が泣き止むまであの場所で、

僕はあの木の先でずっとずっと、いつまでも

「‥待って、いるから‥‥」

そうつぶやいて僕は少し雪の積もった地面に文字を書いてそこから立ち去った