赤ずきんⅡ -赤ずきん視点-
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私は、お母さんに言われた通り森で花を摘んでおばあちゃんの家に行こうとした
私が花を摘んでいると木の後ろでなにかを見つけた
それは恐る恐る私に近づいてきて20Mくらい後ろの木で止まっていた
‥私は顔をあげるふりをしてそれをみた
そこには私より少し大きなオオカミ(人狼)がいた
私は彼にこれ以上かかわってはいけないような気がした
だから私はおばあちゃんの家に向かう途中、遠回りをして行った。
とはいっても私がお母さんからおばあちゃんの家に行くよう言われたのは
一度だけで、本当は彼に‥
いや、だめだ。違う‥
思っちゃいけない
会いたいなんて
ふれたいなんて
話したいなんて‥
思っていいはずがない
「‥何故私は人間なの‥?」
もしもオオカミだったら‥
そう思ってしまう
私は今日もまた花を摘んでいる
そして、あなたはまた木の後ろで隠れているんでしょう?
私があなたのことに気づいていることにあなたは気づいているのでしょう
けれど私たちの視線が絡むことはない
声が届くことだってない。
それはいままでも、そしてこれからも変わらない
そう考えたらため息が出てしまった
‥会えなくてもいい
ふれることができなくてもいい
話せなくても‥いいから‥
私がここにいて、そしてあなたが木の後ろにいる。
それだけでいいわ。
これは“恋”というんでしょう。
私の初めての恋‥
もしこれを恋と言わないというならば私は言葉なんていらないよ‥
でも私がどんなに望んでも私とあなたが一緒に幸せになる方法が‥
見つからないんだよ‥‥
今日も私は花を摘んでおばあちゃんの家に向かおうとした。
でも今日はいつもと違うことがひとつあった
それはあなたが私についてきたこと。
私はあなたに会いたくて‥面と向かって会うことができなくても
会う口実を作るためにおばあちゃんの家へ行くようになって
それから1週間くらいたってからお母さんに
「そんなに頻繁に行かなくてもいいでしょう」と言われてからは
おばあちゃんの家へ住んで家へ飾るためと言って花を摘みに行った
夜になってもあなたはまだいて
そして私はいつもより早く自分の部屋へ行った
あなたがいてくれたことがうれしかったからなのか私は部屋に入ると涙がこぼれた
泣いていることがおばあちゃんにばれないようにベッドにうつ伏せになった
会いたい
ふれたい
話したい、なんて思っちゃいけない。
でも、自分の心に嘘をつくのはもう‥
無理だ‥
苦しいよ‥‥
本当は‥
「あなたに会いたい‥」
気づけばポツリとつぶやいて自分で驚いた
あなたはこの声が聞こえているのだろうか
私はそのまま言葉を続けた
あなたが聞いていることを願って
「‥あなたと、話したい
あなたに‥ふれたいよ‥‥」
けれど、それはかなわないんだってわかってる
毎朝、毎晩神様にお願いした
あなたと一緒に過ごしたい、と
でも無理なんだよ。かなわないんだよ
私は人で、あなたはオオカミなんだから‥
わかってる。諦めなきゃいけない
そう思えば思うほど胸が苦しくなる
涙がぬぐいきれないほど溢れてくる
でも‥
‥‥諦められるわけないじゃない‥!
「‥‥っ‥」
がさり、とベッドの横にある窓の外から草が揺れた音がした
‥あぁ、あなたはそこにいるのね
こっそりとベッドから起き上がって窓の外をみると君がなにかを雪の上に書き始めた
彼がいなくなってしばらくして私は外へ出てあなたの書いたものをみて
また、私は涙をながした
雪と同じ真っ白い息が出る
「いつまでも、待っているから」
そんなあなたの言葉が聞こえたような気がした
気が付くと私は白い息を吐きながら上着も羽織らずに部屋を飛び出した
-------I love you with all my heart------
( 君を心から愛しています )
真っ白の雪に掘られたその文字だけはいつまでも消えずに----
作品名:赤ずきんⅡ -赤ずきん視点- 作家名:八月一日