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終電間近の池袋。
人も疎らなサンシャイン60通りの東急ハンズ前に新宿の情報屋 折原臨也がいた。

酔った人、仕事帰りの人、大切な誰かと共に帰路に付く人など、さまざまな人が行き交うその場所で、臨也は暇つぶしをするかのように人間観察をしながら、一人の男に見つけられるのを待つ。
自分からは見つけようとはしない。
待ち合わせをしているわけでもない。
ただ一方的に見つけられるのを待つだけ。
この場所にすら来るかどうかも分からない。
ただ、臨也にはなんとなく待ち人はこの場所に来る様な気がしていた。
『来るような気がするだけで、来るわけ無いか・・・。』
心の中でそう臨也は呟き、駅へと向かう。

ちょうどケンタッキーフライドチキンの店の前を通り過ぎた頃、背後から何かが飛んできた。
ぎりぎり真横を通り過ぎたソレは、紛れも無く自動販売機。
コートのポケットの中に手を入れ、中のナイフの刃をコート内で出すと、そのナイフの柄を握りながら笑いながら振り向く。
「不意打ちで自販機投げるなんて、静ちゃんたら酷いんじゃないのぉ?」
笑いながら、平和島静雄に近づく臨也。
「ちっ、外れたか。」
舌打ちをしながら、明らかに不機嫌そうな顔しつつ、手にはどこから持ってきたのか分からない止まれと書かれた標識を持ち、臨也に近づく静雄。
二人の距離が近づくにつれ、お互いに持つものを握る手に力が入る。
「ほぉんと、静ちゃんてば、俺見つけるのうまいよねぇ。
 何、GPSで俺の事見張ってるの?」
分からないっていう風に、臨也は首を横に振りながら、ポケットからナイフを取り出し、強く握る。
顔は笑っているが、彼の眼は笑っていない。
「あ゛あ゛?
 俺がそんなことするわけねぇだろぉが、てめぇじゃあるまいし。
 つーか、池袋来るんじゃねぇっていっただろぉが。」
顔も眼も笑っていないその顔を数歩歩けば近づける臨也に向ける。
その刹那、目の前にいた臨也の姿が消えたかのように見たその瞬間、静雄は後ずさる。
びゅっという音と共に、頬に熱い感覚と、何かが少し垂れる感覚がした。
そんなのを構わず、手に持っていた標識を振り下ろすと、コンクリートがドゴリと割れる音が下かと思うと、そのまま臨也に向かって標識がびゅんと空を切る。
それを器用に臨也は交すと、くるりと静雄のほうに振り向くとにっこりと微笑む。
「静ちゃんと遊んでる暇ないんだよね。
 終電なくなっちゃうし。
 それにほら、静ちゃんと違って、俺は忙しいからさぁ。」
そういいながら、臨也は踵を返し、走っていく。
「いぃぃぃいいいぃざぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁやぁぁああああ、てめぇ、ぶっ殺す。」
そういいながら、静雄も標識を持ったまま追いかける。
それを少し振り向きざまに見た臨也は満足げに笑う。
「ほんと、静ちゃんしつこい。」
嬉しそうに全力で走りながらそう呟く。

臨也は終電がなくなるという事場とは裏腹に、駅の反対側のほうに走る。
しばらくの追いかけっこ。
造幣局辺りまで追いかけっこをしていた臨也は、ふと路地裏に入る。
ソコは住宅街が立ち並ぶ場所。
人がいない事を確認すると、臨也は立ち止まり、背後からくる静雄を待つ。

静雄は臨也を見つけると、標識を持ったまま臨也に歩み寄り、そのまま臨也を見下ろす。
それを臨也は見上げ、にっこりと微笑むと、自分が傷つけた頬に手を添えた。
「っつ・・・、いてぇよ、ばぁか。」
先ほどとは打って変わって、静雄のその顔は穏やかだった。
「ごめんね、静ちゃん。」
しょんぼりとしつつ、臨也は傷ついて少し血が出ていた頬の傷口を撫でる。
ソレに笑いながら、静雄は臨也の頭を撫でた。
「詫びるくらいなら、ナイフで切りかかってくるんじゃねぇよ。」
そう言いながら静雄は臨也の頭を撫で続ける。
それにびっくりした臨也は一瞬眼を丸くしたが、すぐにその顔を悪戯した子供のような笑みを浮かべた。
「静ちゃんがとろくさいのが悪いんだよ。」
「うるせぇな、てめぇがちょこまか動くからだろぉか。このノミ蟲。」
少しイラッとした静雄は、そのまま臨也を抱き寄せると、手に持っていた標識を手放したのか、ガランとした音が響いた。
それに臨也はびっくりしつつ、身を任せる。
先ほどまで本気で殺し合いをしていた二人とは見えないほどの甘い空間。

臨也が耳を澄ますと、静雄の心臓の音が聞こえる。
それが臨也にとって心地よい音だった。
「静ちゃんのせいで、終電逃しちゃったじゃん。」
膨れながら静雄を見上げると、愛しいものを見るかのような顔で臨也を見下ろしていた。
「じゃあ、今日は家泊まってけ。」
笑いながら、臨也が痛くないようにほんの少しだけ力を込め、見上げる臨也の額に口付ける。
その行為に真っ赤になりながら俯くと、臨也は軽く頷く。
そして静雄はそのまま臨也を姫抱きをすると、軽くコツリと頭を臨也の頭にぶつける。
「痛いよ、静ちゃん。
 ほんと、石頭だよね。」
そう悪態ついてはいても下ろせとは言わない。
それを無言で静雄はやり過ごすと、そのまま人気が無い所を狙って帰路に着く。

彼らが喧嘩でいう言葉はいつも意味が間逆。
お互いの持つナイフや標識、自動販売機が出すその音は、他人が聞いたら怖い音。
けれど、二人にとっては愛の告白。

狂気じみた愛情。
片や人を愛しているのに愛されたことがない男。
片や人に愛されているのにそれを見てみぬフリをして、愛せない男。

そんな二人が奏でる喧嘩の中で言う言葉は愛の歌。
言葉が歌ならその喧嘩で出る音はその音楽。

池袋で日夜繰り広げられるソレは、誰にも言えない二人の愛の証。
それを目撃する人たちが皆、その承認者。

ただ、その喧嘩の意味を知るものは誰もいない。
本人達、二人だけを除いて。

喧嘩で出る音、ソレは二人のお互いへの『愛してる』
作品名: 作家名:狐崎 樹音