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エイプリルその後

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「これはどういう事だ?」


ヴェストが怒っている。
片手にベトベトに濡れたパソコンを持って、海みたいな目が静かに俺を見ている。

「あーそれな…」


ムキムキは威圧感があって困る。
返答に困って目をそらすと、頭が痛そうに目を細められた。


「まったく、兄さんはもう少し落ち着く必要がある」


問い詰めるのを諦めたのか、ヴェストはパソコンを机の端に置いた。


「エイプリルフールだぜ?落ち着いてられるかよ」

「普段と変わらないだろう」


溜め息が重い。
固い。固すぎるぜヴェスト!
肉体も精神もムキムキだ。

「おまえも今日くらいは少しはじけてみたらどうだ?」


「…どうすればいいのかわからん」


声のテンションが落ちた。
もしかして拗ねてるのか?


「どうっておまえ…」


何て言えばいいんだ?
俺はつまり楽しめって事を言いたいわけで。


「…ヴェストの好きな事すりゃいいんじゃないのか?」

楽しめってのを説明するのは難しい。
だから思いついた事を言った。
俺、冴え過ぎ。


「ほう」


ん?
何か、ヴェストの空気が変わった。
細めた目に、歪められた口許。
俺、なにか悪い事言っちまったか?


「俺の好きな事をしろと」


「あ?ああ、いいんじゃねえ?今日くらい」


何か胸騒ぎするんだけど、気のせいか?


「っ!?」


急に視界が反転した。


気付くとヴェストが俺の上に乗って抑えつけてた。
フローリングの床が冷めてえし、背中痛てえ。


「なんだこれ、警察ごっこか?」


俺、犯人役?
一瞬、ヴェストが呆れた顔をした。


「兄さんは無防備だな。アーサーの飯を警戒せずに食べたり、俺にはこうやって簡単に組み敷かれたりして…危機感が足りなさすぎる」

「何か、怒ってんのか?」


やべぇ、ヴェストがマジで切れたっぽい。
このまま殴られんのは別にいいが、思いあたる事が多すぎて肝心の理由がわからねえ


「兄さん、自分の状況が分かっているのか?」


ヴェストがやや心配そうな目で俺を見る。

「殴りたいなら殴れよ。何か俺に怒ってんだろ?」

あ、あれか?
俺がパソコン壊したからか?
掃除は一応やったし
イギリスの飯は知らずに食ったんだから不可抗力だしな


「!?」


色々考えてたらヴェストの顔が物凄い近くにあった。
少し動けば鼻同士がぶつかりそうな位置だ。
俺の赤い目がヴェストの青い目に映ってるのが見える。

思わずヴェストの固い胸板を手で押し返そうとした。

「遅い」

が、その手を拘束された。
ヴェストが挑発的な目を向けてきた。


「さあ、どうする」


正直な話、このムキムキに完全に押さえ込まれたら、俺は8割方勝てる気がしねえ

「おま…あれか?これは、俺を剥こうっていう、そういう事か?」


「やっとわかったみたいだな。さあ兄さん、覚悟はいいか?」


「ちょ…!待っ」






ぷに。



柔らかい感触が唇に当たった。



「ふぇ……?」


目の前に見えるのは、どこぞで押し付けられたパンダのぬいぐるみ。

どうやら俺はこいつに唇を奪われたらしい。


「遅くなったが、俺からのエイプリルフールだ」


ヴェストは顔を赤くしながらパンダのぬいぐるみを投げてよこした。



「はははは、なんだよヴェスト。俺にキスしたいならしてもよかったんだぜ〜?」


「一瞬俺を拒んだクセに、よく言う」



「拗ねるなよ。驚いただけだろ?お前が本気ならベッドにでも行ってやるぜ」



「そ、それはエスカレートし過ぎだろう」

赤い顔のまま、ヴェストは律儀に俺の目をまっすぐに見た。



「兄さん」
「おう」

「すまない。悪ノリが過ぎた。」

「気にすんな。フランシスなんかいっつもこんなノリだぜ?」



「………………兄さん」

「え、俺また何か言ったか??」




END☆
作品名:エイプリルその後 作家名:甘党