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ゆらのと

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ふと、銀時が眼をそらした。
さらに身を少し退いた。
その口が開かれる。
「冗談だ」
眼がふたたびこちら向けられた。
「間抜けなツラしてんじゃねーよ、バーカ」
軽い口調だった。
けれど、その眼は笑っていない。
堅くて、鋭い眼だ。
どこか淋しげで、傷ついているようでもある。
その眼差しが胸に突き刺さった。
なにかを求められている。
そんな気がした。
しかし、なにを求めているのかわからず、どうしようもなくて、ただ黙って立っていることしかできない。
銀時が眼をそらす。
そして、笑った。
「じゃーな」
軽く言った。
別れの言葉を。
ハッとした。
なぜ、今、そう告げたのか。
不安になった。
その言葉を口にした真意を問おうとする。
けれど、そのまえに銀時はさらに離れ、身体の向きを変えて歩きだした。
このまま行かせていいのだろうか。
「銀時」
名を呼んだ。
しかし、銀時は立ち止まらなかった。
なにも反応しない。
去っていく。
まだ遠くまで行っていないから追いかけることはできる。
だが、足が動かない。
戦でたくさんの命を失い、銀時は彼らを護りきれなかったことを悔い、自らを責めていた。
銀時は疲れ果てていた。
絶望していた。
それを自分は知っていた。
知っていて、なにもしなかった。なにもできなかった。
友人であるのに、苦しんでいることを知りながら、なにもできなかった。
やがて、銀時の姿が完全に見えなくなる。
桂は眼を閉じる。
少しして眼を開け、何気なく手を口にやった。指が唇に触れる。
そこに重ねられた体温がまだ残っているように感じた。




それきり、銀時は消息を絶った。








作品名:ゆらのと 作家名:hujio