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ゆらのと

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新八と神楽が近づいてくる。
ふたりとも晴れやかな表情をしている。
「銀ちゃん、そのままヅラつれて結婚式場に行ったらいいアル」
神楽はにやっと笑った。
「そうですよ、桂さん、ちょうどいい格好してますし」
新八が同調した。
ちょうどいい格好とは、この純白の衣装のことか。
そう思い、桂は眉根を寄せる。
「なにをバカなこと言っているんだ。男同士で結婚できるわけがないだろう」
「バカなのはオメーだ。コイツら、からかってるだけだ。真に受けてんじゃねーよ」
「そんなことないアル! 私、本気で言ったアル!」
「僕も、まあ、そうですね、半分、いや、十分の一ぐらいは本気でした」
「十分の一ぃ? そんなこと言ってるから、モテないアル」
「か、関係ないよ、そんなの!」
新八と神楽は話から脱線したやりとりを始める。
しかし。
「まァ、寄り道しねーで、さっさと家に帰りてェ」
ぼそっと銀時が言った。
新八と神楽は、一瞬、黙った。
そして。
「ウン」
「そうですね」
ふたりとも銀時に同意した。
桂の頭に、地球の、江戸の光景が浮かぶ。
それは、ただの景色ではなくて、懐かしさを感じる。
早く、見たい。
早く、あそこにもどりたい。
恋しく想う。
「……だが、もどった頃には、もう桜は散ってしまっているだろうな」
江戸の様子を想像して、桂は言った。
桜の花が咲くのを見たかった、と惜しむ。
帰れるだけでも充分なのに、わがままだろうか。
そう思ったとき。
「来年、見りゃいいだろ」
銀時が素っ気なく告げた。
さらに。
「来年、一緒に見ようぜ」
そう小声で付け足した。
眼の裏に、桜の咲いている光景が浮かんできた。
来年の桜。
その光景の中に、自分と銀時がいる。
攘夷志士だから日本の夜明け以外の先のことは考えないようにしてきた。
けれども。
「ああ、そうだな」
そう返事した。
これまで季節はいくつも過ぎ去り、そして、また巡り来る。
過ぎ去ったいくつもの季節でそうであったように、これから巡り来る季節でも、銀時と一緒にいる。
そんな気がして、なぜか、胸がじんわりと温かくなる。
ふと、銀時の腕にいっそう力が入ったのを感じた。
伝わってくる、想い。
その強さに安堵する。
幸せだと思う。
桂は腕の中で力を抜き、銀時に身体を預けた。









作品名:ゆらのと 作家名:hujio