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ゆらのと

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背を向けているので、ふたりにはこちらの顔は見えない。
だから、銀時はふっと口元をほころばせる。
ふたり分の乗車券と宿泊券は、自分と桂が使う。
そうしたらいいと神楽が提案し、新八もそれを勧めた。
銀時はそれを受けたのだった。
新八と神楽の心遣いを温かく感じる。
「おう」
そう返事して、右手をあげ、顔の横で左右に振った。
ブーツをはく。
それが終わると、戸のほうに行った。
うしろから声は聞こえてこない。
しかし、新八と神楽が去った気配はない。
見送るつもりなのだろう。
銀時は戸をガラガラッと引いた。
足を外へと踏みだす。
暑い。
家の中も暑かったが、やはり、外のほうがずっと暑い。
戸を閉めた。
それから、階段をおりる。
陽ざしは強烈だ。
肌を焼かれて、汗が噴きだしているのを感じる。
昼に近づくにつれ、もっと暑くなるはずだ。
外は炎天下と呼ぶのにふさわしいような状況になるのだろう。
それと比べればましだと思うことにして、銀時は道を歩き続ける。
これから、桂と駅で合流し、一緒に旅に出る。
行き先は自分と桂の故郷だ。

予想したとおり汗だくになりながら、駅に到着した。
改札の近くに托鉢僧が立っている。
「よォ」
声をかけた。
托鉢僧が笠の下の切れ長の眼を向ける。
「乗車券と宿泊券はちゃんと持ってきたんだろうな?」
開口一番これだとは、かわいげがないと思う。
しかし、持って出るのを忘れそうになった事実があり、それを鋭く見抜かれた気がして、心臓が一瞬強く打った。
もっとも、そんなことは顔には出さないが。
「あったりめェだろ」
懐から乗車券と宿泊券を取り出して、桂の分を渡した。
桂はそれを受け取る。
その姿を見て、銀時は言う。
「これから、俺ァ、坊さんとふたり旅かよ」
「しょうがないだろう。こんなにひとが多くて、真選組の見廻りもある場所なのだからな」
特に合図もなく自然に歩き始める。
桂の手にある錫杖がシャランと涼しげな音をたてた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio