初めての夏祭り
「“よぉ、テツ”」
「青峰君ですか、どうしました?」
唐突に青峰から電話が来た。だが黒子は驚く事無く
携帯を手に取った
「“夏祭り、行かねぇか?”」
「青峰君ってそんなキャラでしたっけ?」
「“いや、キャラでもねぇし、性にもあわねぇ。
一言で言うと面倒臭ぇ”」
「面倒臭いのに何で行こうなんて、ボクに言うんですか?」
「“さつきが行こうって言って聞かねぇ、それだけだ”」
「“あーっ!!!何で私ばっかに責任おしつけるのよっ!!
青峰君だって楽しそうにしてるじゃない!”」
いきなりさつきの文句が聞こえてきた
ハッキリと聞こえるのだから、相当大声で言っているのであろう
「桃井さん?」
「“あっ!!テツくーん?久しぶりーっ!!
どう?今度の日曜空いてる?空いてるよね!?”」
ほぼ向こうから確定的な事を言って来た
「“っせーな、耳元で叫ぶなよ”」
そこで、青峰の呆れ声が聞こえてきた
「“叫んでなんかないわよ、これが普通よ”」
「“何が普通だ、テツの事になるとキーキー、キャーキャーと”」
「“別にこうやって喋るのはテツ君に限られた事ではないわ”」
「“誰にしようが関係ねぇが、俺の横で叫ぶなつってんだ”」
「“叫んでなんかないって、言ってるじゃない!!”」
不毛である
「青峰君、桃井さん。落ち着きませんか?」
「“俺は落ち着いてるってんの。さつきがうるせぇだけだ”」
「“だから私はうるさくないわよ!このガングロ!!”」
またもや、黒子は忘れ去られる存在となった
数分後
ようやくおさまり、さつきが電話に出た
「“ごめんね、テツ君。私達、意見が合わないとすぐこうなっちゃうの”」
「それは昔から理解している事です、青峰君と桃井さんは何も変わっていませんから」
「“そうよねぇ、まっそれはいいとして
夏祭り7月〇日だから。場所、分かるよね?”」
「はい」
黒子がそう返事したと同時に青峰の貸せ、という声が聞こえた
「“それとテツ、火神もつれて来い”」
「火神君ですか?」
「“おぉ、あいつ連れて行ったら面白そうじゃねぇか
化け屋敷なんか入れてみろ。逆に化けた方が驚くぜ”」
「青峰君、火神君は怖いものは苦手ですよ?」
「“それマジか、テツ”」
「はい」
「“ぷっはははっ!あんなでけぇ図体して
怖ぇもん苦手って、ははは
やべぇツボるぜ、これ”」
「ボクも最初意外でした」
「“ひー、意外どころか、こんな面白れぇ話はねぇぞ
ますます興味湧いてきたぜ”」
「それじゃあ、連れてきますね」
「“おぉよ、じゃあな。テツ”」
「はい、また今度」
そこでお互いに電話を切り、黒子は電話帳から火神の携帯番号を探す
見つけて通話ボタンを押す
3回ぐらいなって繋がった
「“もしもし、黒子?”」
「火神君、今時間大丈夫ですか?」
「“あぁ、今バスケしてるだけだしな”」
休日だというのに平日と変わらずバスケをしているらしい
彼がバスケ馬鹿、というのは大層頷けるものだ
「7月〇日空いてますか?」
「“〇日って日曜だろ?いつも通りバスケしようと思っていた所だ”」
更に頷ける
「“なんだその日、何かあんのか?”」
「はい、夏祭り行きませんか?」
「“はっ!?黒子!お前いつからそんなポジティブなったんだ!オイ!”」
「別にこれはボクの提案ではありません、青峰君です」
「“青峰がか!?”」
青峰、という名前が出てきた途端火神は取り乱し始めた
「正確には桃井さんからなんですが、青峰君がそれにノッたようで」
「“まぎらわしーな、つーか何考えてんだか。あいつ”」
「青峰君が何を考えてるかなんてボクにも分かりませんが
行きましょう、火神君」
黒子は青峰の考えている事が分かっていながらも敢えてとぼけてみせる
「“まぁ、黒子がそこまで言うんなら行く
実際、夏祭り行くなんて初めてだかんな”」
「えっそうなんですか?」
「“向こうでは、なかったからな。夏祭りなんて”」
「じゃあ、浴衣も着たこと無いんですか?」
「“あぁ、買ったまではいいが、教えてくれ”」
「分かりました。では〇日に」
「“おぉ、じゃあな”」
二人はそう言葉を交わし電話を切った