恋、してる?
「あぁ、学生さんは丁度帰宅時間だね。一人で帰宅とは珍しいな」
いつもどおり来良の制服をしっかり着込んでいる帝人に、自分でも気づかないうちに足が向かっていた。
少し大きめの声を出せば届くだろうという距離に差し掛かった時不意に気がついた。
(あれ?帝人君と...浪江?)
珍しいといえば珍しい組み合わせ。
だか、弟である誠二と帝人がクラスメイトである事を考えるとないともいえない組み合わせである。
「もうっ!浪江さんからかわないでくださいよ...」
「ふふふ。帝人は可愛いわねえ。また連絡しなさい」
じゃあね、と立ち去っていく浪江と顔を真っ赤にしている帝人君を俺はその場を動けずにいた。
* * *
綺麗に整えている爪をイライラしながら噛みつつ、目の前の扉の前にもうすでに10分以上たっている。
結局、帝人と浪江がいなくなってからもその場を動けずにおり、気がついたときにはまわりが真っ暗になっていた。
その間考えたことといえば、浪江は弟一筋じゃなかったのかだとか、帝人君は俺の駒のくせに浪江にちょっかいかけられてるな!顔を赤らめるな!だとか、まとまりのないものばかりだった。
そしてその足で帝人のボロッちいアパートの扉の前にいる。
なぜか家に入ることも出来ずに寒くなってきたのに扉の前で10分...
風邪をひいたらどうしてくれると思いながらも動けずに10分...
そんな状態をあざ笑うかのように内から扉が開いた。
「うわぁ?!ってい、臨也さん?どうしたんですか...あ、ぶつかってないですか?」
「え...?あぁ。大丈夫だけど...帝人君どこか出かけるの?」
「えぇ。銭湯にいこうかと思って...恥ずかしいんですけどここお風呂ないんですよ」
少しはにかんで笑う帝人に知ってるよと思いながらもそうなんだとかえした。
「ところで臨也さんはどうしたんですか?」
「うん...帝人君にちょっと聞きたいことがあって」
「なんですか?...ってここじゃなんですから中にどうぞ」
畳にあぐらをかきながら柄にもなく口が渇いていることに気づき、唾を飲んでごまかす。
俺は何を緊張してるんだ?
っていうか、別に来る必要もなかった気がする。駒が恋しようが何しようが俺には特に関係がないはずだ。
それなのに、自分の意思とは関係なく、気がついたらここにいる。
「えっと...あ、あのさ、帝人君。君、恋してるでしょう?」
「は?」
「今日浪江と話してるの見ちゃったんだよね」
そういった途端、帝人君が漫画に出てきそうなくらいぼっと赤くなった。
「な、ななななななっ!!??」
くそっ。口をパクパクしてる姿も可愛いし...って可愛いって何いってんだ俺...
「い、臨也さんはその...正直ひきますか...?」
不安そうな顔で見上げられ、不意にドキっとなる...が気づかないことにした。
クラスメイトの姉をそういう目で見る事に対して、真面目な帝人君はそう思うのだろうか?
「いや、そんな事思わないよ?ただちょっとビックリしたから聞きにきただけだから」
口ではそんな事をいいながらも頭の中では違うことを考えていた。
浪江と帝人君の年齢差と俺と帝人君の年齢差を考えても浪江より俺の方がいいはずだ。
「じゃあ、僕あきらめなくてもいいんでしょうか...?」
「え?」
急に影が差し不意に顔をあげると頬にやわらかく温かい唇が触れた。
「じゃ、じゃあ!これからは臨也さんをオトすつもりでいきますっ!!覚悟してくださいねっ!!せ、銭湯行ってきますっ!!!」
顔を真っ赤にして高らかに宣言すると、壊れるんじゃないかという勢いで出かけてしまった。
それを呆然と見送りながらも、帝人に負けないくらい顔を真っ赤にした俺が自分の気持ちに気づいた瞬間...。
恋、してる?
YES!恋をし、されていました______