Angel Beats! ~君と~
照りつける太陽、わんさかと集まっている観客。
もはや球技大会ではなく甲子園だ。
「先攻、後攻はコイントスで決めるぞ」
鬼壁の声は低くそれでも遠い観客席に届いた。
「表でお願い」
「俺達は裏で頼む」
でかい手をポケットに入れると百円玉を取り出した。
キィンと鬼壁の親指によってコインが回転しながら上がっていき、落ちて行った。
鬼壁はコインが表か裏を確かめた。それは、
「表か、先攻はSSSチームだ。各自互いに所定の位置に付け」
「皆、準備は良いわね!この試合勝つぞ、オーーー!!」
『・・・・・・・』
一人だけ盛り上がっているゆりはさらに盛り上がっていた。
「何でみんな盛り上がらないの?」
「最初は音無だな行ってこい!」
「俺が一番じゃないのか!」
「まあ待てよ野田、お前は一発逆転の切り札だ。お前は6番だ」
「ちょっと、無視!?」
「じゃ、行って来るわ」
「おう、行ってこい!」
「ねえ!わざとよね!?」
うるさいゆりを助監督である遊佐がなだめた。
「プレイボール!」
鬼壁が試合開始宣言をすると観客席の野次馬が騒ぎ始めた。
(先頭打者か・・・・ここで、俺が塁に出なきゃ始まらないな)
そう考えている間にピッチャーは振りかぶった。
(遅い!)
キィン!と結弦は球をバットの芯で捉えた。
球はセカンド、ファーストの絶妙な所へと行った。
それを見ていたSSSメンバーは、
「なかなか、やるじゃない・・・」
「ゆりっぺさん音無さんは野球経験あるんですか?」
「いや、無いみたいだぜアイツ」
「日向君とは大違いね」
率直な感想を述べるとゆりは足を組み、キンキンに冷えた麦茶を飲んだ。
「It´s my turn」
TKは英語を放つとバットを取り出しベンチから軽快なダンスで踊り出た。
「次、TKか・・・・・頑張って来い!」
「Oh yes!」
(おい、コイツ目元に赤いバンダナ巻いてっぞ。どういう事だ!俺達を舐めてんのか?)
キャッチャーはミットをややTKのボールゾーンギリギリへと構えた。
今度は負けじとピッチャーはさっきより球の速度を早めた。
「Full swing! Hooooooooooooooooooooooo!!」
カァン!!と音無よりでかい音がバットより発せられた。
これはもう誰もが思った。
「スッげぇ」
キャッチャーでさえも感嘆と漏らした。
そう、ツーランホームランだ。
「何もかも謎だらけ・・・・・侮れないわね。てか何でバンダナしてるのにボールが見えるのかしら?」
「流石TKさんですね」
SSSメンバーは帰って来たTKを手荒く歓迎した。
その後は続き日向が塁に出た。
あっという間にもう7点の差が出来た。後は適当にアウトにし、守備交代した。
(まずい・・・こんな寄せ集めのチームに負けるなんて。だがこのチームは強打者が多い。一発逆転の手だってある筈だ・・・・)
相手チームのキャプテンはかなり焦っていた。SSSチーム(相手チーム)を弱く見ていた、それが7点差の理由。
(7点差か・・・・ここで俺が投げてアウトにすれば早めに試合は終了する)
ピッチャーマウンドに立ち、調子を確かめる様に腕を回した。
「来ぉい!!」
野田は何故か殺気を放ちながらキャッチャーマウンドに居た。
そういえばアイツキャッチャーだったよな、と顔をしかめてボールを握った。
そして、オーバースローで投げた。
「!?」
パァン!と見事に野田のキャッチャーミットに入った。
「ストライク!」
(今の一体・・・・?)
バッターボックスに入っている相手はあまりの速さにバットを振れなかった。
(しびれるぜ・・・・・)
野田はボールを音無に投げ渡した。まだ手が痺れているのを我慢して。
「遊佐」
「何ですか?ゆりっぺさん」
「あの球の速度どれ位かしら?」
「まあ、約100キロですね」
ゆりの疑問に竹山が代わりに答えた。
「100キロって、凄いですね。一体どうやって算出したんですか?」
腕立て伏せをしながら高松は問いかけた。
「企業秘密です」
「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!!」
鬼壁の低い声が試合の終わりを告げた。
相手チームのキャプテンは膝ま付き、拳を地面へと叩いた。
何故なら、全てのバッターを打たせずスリーアウトにしたからだ。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影