Angel Beats! ~君と~
『お手てのシワとシワを合わせて………』
『錬金術!!』
パン!ドン!バリバリ!!ドーン!
『鋼のおぶつだーん~』
ユイ
「………………」
日向
「………………」
ユイのお母さん
「………………?」
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第40話 Koeda in the dark 後編
『今着替えるから待って!』
『またか!』
「ね!カッコいいでしょ先輩!」
「最近の特撮って進んでるな……」
取り敢えず日向はユイのおすすめの特撮を見ているが、どうもハマってしまった。ハマるのは良いがもう外は暗く、10時を回っている。ユイのお母さんに、どうせなら泊まっちゃえば?、と言われたので今日だけ泊まることにした。
(アイツら…今頃何やらかしてんだろな……)
海には行かない、そう言ったものの日向は本当は行きたかったがユイはどうするんだと。自分が行ったらユイは一人で病室(ここ)に居なければならない。それだったら行かないでユイと一緒に居た方が彼女自身が寂しくならずに済む。
『喰らえ!必殺キック!!』
『なんだそのヒネリの無い微妙な技――――ぎゃあああああああああああああ!!』
空高く飛び、カッコ悪い必殺名を言いながら怪人に向かって蹴る。そして、必殺技を受けた怪人は爆死。
一方、
「この肉は俺のものだーーーーー!!!」
「そんな事はさせこさん!!!」
「何言ってるの!?私のものよ!!」
「Foooooooooooou!!」
「この私の催眠が………」
「駄目だ諦めろ直井。みんなすき焼きに夢中だ」
嵐が巻き起こっていた。
4~6人で一つの鍋を囲む。これで決まり。だが、明らかにおかしい。チーム配列を間違ってしまっている。
「見て見てお兄ちゃん。あっちでお肉が跳び跳ねたりしてるよ~」
初音の言っている事は正しい。一つの鍋で5人が争っており、箸と箸の掴み合いで肉が落ちその肉を掴むことにより肉が跳び跳ねて見えるのだ。
「初音さんはああいう大人になってはいけませんよ」
「は~い」
「まったく…まだまだ子どもだな……」
「その枝里に何で肉が山盛りについであんの?」
「浅はかなり」
そのすき焼きの片隅に小枝が虚しく野菜だけを黙々と食べている。そこに結弦が声を掛けてみる。
「肉食べないのか?」
声を掛けられた小枝は死んだ魚の目になっていて焦点が合っていなかったという。
「……大山君の顔を見てるだけでお腹が一杯だよ………」
(大山無しじゃ生きられないんじゃ……コイツ…)
そんなのはお構い無く隣のテーブルでは野田と関根とゆりとTKによるアクロバティックな技が繰り広げられている。
結弦はあんな事は出来ないので大人しく野菜や肉をバランス良く食べながら、
(こんなにうるさくして他のお客さんに迷惑なんじゃ―――――)
「心配いりませんよ音無さん。私達しか居ませんから」
「ぶふ!何で心が読めるんだよ!?」
野菜が間違えて肺に入そうな位びっくりする。
遊佐は読心術でも極めているのだろうか。
「音無さんは思っていることが顔に出るタイプですから。誰にでも分かりますよ」
「まじかい……」
「まじです」
このテーブルでは肉争奪戦が起きていないのはとてもラッキーであろう。だが、隣はもう戦争状態にまで達していた。
「直井……」
「何だ?」
「隣に行かねぇか?」
「奇遇だな……初めて意見が合ったな……」
こうして直井と藤巻は戦争から脱退したのだった。
『はあ?今度は宇宙に敵だぁ?無理無理。俺生身だし』
『ヒーローがそんなこと言ってどうすんだ!?戦えよ!?』
『いやだね!どーしてヒーローに頼るんだよ!自分達の力で敵を倒せよ!最近の技術って発達してるだろ?軍に頼れよ!!』
『主役が何言ってんだ!!』
「おーいユイまだ『ジャージ男 宇宙へ行く!!』が終わってねえぞ~」
「………………」
「駄目だ……まったく起きない…」
ユイと日向とユイのお母さんで映画(ジャージ男)の鑑賞会を開いたのだがその本人が続行不能に陥ってしまった。
「ごめんなさいね日向君。遅くまで付き合っても…………」
首がカクンと落ちていく。
「……?」
途中で止まってしまった言葉は続くことはなかった。
「まさか…死んだ……!?」
慌てて行こうと、確認しようと思ったら寝息をゆっくりと立てていた。何しろもう、11時50分。眠ってしまうのは無理もない。
ユイのお母さんは慣れているのだろうか、椅子に座って寝ている姿勢がかなり良い。
「……俺もそろそろ寝るか………」
日向は病室の電気とテレビを消し真っ暗にすると、ユイのベッドの隣の椅子に座る。
何故、日向が真っ直ぐに椅子に座れたかというと、完全に暗くなり、窓から月の光が射し込んで病室が照らされていたお陰で素早く座れたのだ。
ユイの頭を少しだけ撫でると、日向も深い眠りについた。
――12時01分54秒、『チャーの家』のフローリング廊下―――
ギシギシとうるさくもない足音を立てながら、廊下を一人で歩いていた。その人物は光が射し込んでいないので顔が判らないが、これだけは言える。
この時を待っていた、と何かを成し遂げようと満面の笑みを浮かべていた。
暗い廊下を歩き、ある一室に足を止めた。
そして、襖(ふすま)を音を立てず、スー…、と開けその一室に入っていった……。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影