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青いサンタクロース

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 1986年12月24日。明日はクリスマス。世界中の子供たちがサンタさんからのプレゼントを心待ちにする日です。赤い髪をした幼き少女、右代宮縁寿もその子供たちの内の一人でした。ただし、縁寿の願いは他の子供たちとは少し違っていました。
「サンタさん、サンタさん。お願いです。私の元に家族を返してください。これから先、クリスマスのプレゼントは一切いりません。こんなことを言ったら罰が当たるかもしれませんけど、家族全員が難しいならお兄ちゃんだけでも構いません。だから、どうかお願いです。私にもう一度家族の姿を見せてください」
 目を瞑り、祈りを捧げるように手を組んだ縁寿は真剣にそう願っていました。彼女の家族はみんな、不幸な事故によって帰らぬ人となってしまっているのです。だけど、それでも縁寿は奇跡を信じました。真剣に、真剣にそう信じていました。だから、そんな彼女の前に奇跡を叶えてくれる人が現れたのです。
「それがあんたが欲しいクリスマスプレゼントなのね?」
 縁寿はその声に驚き、瞑っていた目を開きました。縁寿の目の前にいたのは、青い髪をした少女で着ている服もドレスのようで、とてもサンタさんだとは思えませんでした。だけど、それでも縁寿はすぐにその少女がニンゲンには不可能なことでも叶えられる力を持っているということが分かりました。
「は、はい! そうです! もう一度だけでもいいから、家族の姿を見たい。それが私が欲しいクリスマスプレゼントです」
「そう。だったら、この私、奇跡の魔女ベルンカステルがそれを叶えてやってもいいわ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、ありがとうございます! その代わりに、私にできることだったらなんでもします! だから、絶対に約束してください!」
「別に、あんたは何もしなくていいわ。いえ、正確に言えば、あんたは何もする気がなくても、私が欲しいものを与えてくれるわ。私の奇跡を覆す奇跡でも起こらない限り、必ず私の思い通りになる」
 縁寿には、魔女と名乗った少女が何を言っているのか分かりませんでした。だけど、必ず約束を果たしてくれるということだけは分かりました。だから、縁寿は何度も何度もお礼を言いました。
 そして、そうしている内に段々と意識が薄れていきました。少しずつ眠りに落ちていくような感覚でした。
「それじゃ、おやすみ。縁寿。明日起きたら、ベッドの横にあんたが欲しいと願ったものがあるわ」
 そして、縁寿は夢の世界へ落ちていきました。夢の中では、縁寿は家族みんなと一緒にいて、みんな笑顔でした。それが正夢になるのは、ほんのちょっとだけあとのこと。縁寿はそう信じていました。
 縁寿が朝目覚めると、ベッドの横には大きな靴下が置いてありました。縁寿はいつの間に眠ってしまったのだろうかと不思議に思いましたが、それよりも靴下の中身が気になりました。魔女との約束が縁寿の夢の中での出来事でなかったのなら、そこには縁寿の願ったものがあるはずだからです。
「この靴下の中に、私の願ったものがある……? この靴下の中に、私の家族が……、私の家族が? え、あれ、どういうこと……?」
 その靴下は普通の靴下よりは確かに大きく、何か大きな箱が入っているようでした。でも、その中に家族が入っているとは思えませんでした。だって、だって、もしその中に家族が入っているとしたら……。
 縁寿は期待と不安が入り混じった表情で、靴下から箱を取り出しました。その箱は丁寧に包装されていて、如何にもクリスマスプレゼントの箱であるようでした。縁寿は恐る恐る包装を解きました。そして、そこにあった“もの”は……。
「いやぁああああああああああああああああああああああああ!! お兄ちゃん、お父さん、お母さん!! こんなの、こんなの嘘だぁああああああああああああああ!!!」
 ――遙かなる高みから、それを見ていた魔女ベルンカステルは嘲るようにこう呟きました。
「私はあんたの元に家族を返してあげるとは約束したけれど、“元の姿のまま”返してあげるなんて一言も言っていないわ。それにしても縁寿。あんたはやっぱり私が欲しいものを与えてくれたわ。私はあんたのその絶望に満ちた顔が欲しかったのよ! くすくすくすくす、くっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」
作品名:青いサンタクロース 作家名:タチバナ