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僕の始まり君の終わり

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宇多田ヒカル Prisoner of Love
ヘタリア ロシア×日本

「大丈夫だよ、必ず戻ってくる。…約束するよ。」
出来るだけ優しい笑顔と声音でラトビアに声をかける。今から戦場に行くというのに引き止めるラトビアを宥めるために。
いつからこんなに嘘をつく様になったのだろうか。平気な顔で嘘を吐いて、笑って。
正直に話すという苦痛から逃げるための術だったのかもしれない。
…自分でも、嫌気が差す。
正直に話せて、真から笑えて、なんて無い物ねだりなのだろうか。
そんな事を考えつつ目を外に向ける。
揺れる車から見えたのは楽しげな子供たちが笑いあう姿だった。
が、足元を見れば雪に半分埋まった子どもが泣きじゃくっていて。
所詮世界はこういうものだ、と冷たく笑う顔が窓に映った。


枢軸国は壊滅状態で後は時間の問題だろう、日本もドイツもイタリアも、切り売りされる。
それは避けたい。
本心を言えば国際会議の時に一目見てから好きだった。…日本が。
あの気高く美しく果てしなく黒い瞳に吸い寄せられた。どんな手を使ってでも手に入れたい。
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。
真っ黒な欲望を背負って戦場を凍らせる。
マフラーに血が飛んで雪の上に死体が倒れて雪に血が染み込んで、僕の足跡が赤く染まった頃に見つけた。日本。

「お久しぶりですね、こんなところで再会したくはありませんでしたが」
「うん、久しぶり。死体で会わなくてよかったよ」
「全くです」

白い服はロシアの血で真っ赤。
会いたかった。

「君の兵士何人死んだ?」
「…そんな事貴方には関係ないでしょう」

あからさまに怒りを露わにしてるのがよく分かる。この言い方じゃだめだったかな。

「相当数、死んでるでしょ」
「煩い!!」

斬りかかって来る、
でも切っ先が僕の肉に沈む前に。

「攻撃、止めてあげてもいいよ。」

頬が少し切れて血が滴る。
でも日本の表情に集中すれば気にならない。

「日本君が…本田菊が僕のものになってくれればね」
「何を…おっしゃっているのです、か」

「初めて世界会議で見たときから好きだった。本当は戦いたくなんかないよ。でも、君を僕のものにする為にはこれしか方法が無かったんだ」
「条件を飲んでくれたら国民には手を出さない」


菊、君が欲しいんだ。
好きで好きで堪らなかった。
でも僕は正直に笑う術も話す事も出来ない。
こんな方法正しくないなんて分かってる、でも
これが僕の正義なんだ。
君を手に入れることが出来れば僕は、


「本当に国民に危害を加えたりしませんか、」
「約束するよ」


手から刀が落ちる音が、世界の始まり。
作品名:僕の始まり君の終わり 作家名:カヲ