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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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普段はとても冷静な判断が出来る大人だと思っていた。子供相手になら、常に笑顔を絶やさない温かい人と。
そんなロックオンが一晩かけて描きあげたあの絵が少し気になる。
視線しか解らなかったがあの暗いアトリエの奥からでも感じた鋭い眼光。
緑色の、鋭い瞳。
疲れ果てた表情のロックオンを。
あの瞳の持ち主はいったいどんな顔をしているのだろう。ロックオンのように優しい表情なら、いい。

「………………あ、薬、切れそう」
「くすり?」
アレルヤがロックオンの絵に思いを馳せていると、ロックオンはいつの間にか朝食をたいらげていた。
キッチンの食器棚から何か怪しげな液体の入った瓶を揺らしながらこっちに戻ってくる。
クリスによるお説教は気付けば終わっていたらしく、食後のお茶でもしようとロックオンはその瓶を取り出したのだが、ちゃぷちゃぷと揺れる液体はもう残りが少なくなっている。
「俺がいつも飲んでるハーブティーなんだけど……今日の分で終わりそう」
「材料は?いつも予備置いてあるよね」
少しクリスが慌てる。そんなに必要なものなのだろうか。
あまり薬を飲んでいるロックオンのイメージがアレルヤには無い。
まあハーブティーと言っているから、日常的に生活の一部として馴染んでいるものなのだろう。
「…………俺常々思ってたんだけどさぁ、そろそろソランにおつかいやらせてもいいと思うんだよな」
「はい?」
突拍子の無いロックオンの発言に、クリスの声が裏返る。
呼んだ?とソランが意気揚々と、どこか自慢げにテーブルの下から登場した。
よじよじと椅子に座ったロックオンの膝を登る。
「おつかい?」
「そうそう、おつかい。ソランーどうだ?おつかいできるか?」
「……できる」
他の子供たちより一回り小さいソランがロックオンに抱っこされるとより小さく感じる。
三年前繭から産まれた時はほぼ赤子同然で、今は寡黙なだけだが、片言でしか言葉を話すことが出来なかった。
灰羽に年齢はあまり関係無いが、恐らく同年代の子達より小さく、周りがかしましくおしゃべりな事がコンプレックスなのだろう。
いつもロックオンの足にしがみついてるのはソランだ。
「俺がいつも飲んでるお茶の材料。わかるよな?」
「……ニンジンでしょ、はちみつでしょ、よもぎ草でしょ、いいにおいのする葉っぱでしょ、、あとえーっと」
「葉っぱはあるから、あとは『いつものください』でいいよ」
「わかった」
「じゃあソラン、アレルヤと一緒に行ってくれるか?」
「えっ?」
「だって年長組の誰かが居なきゃ薬買えないだろ?」
手帳は年長組しか持ってないんだから、と言うと、ソランは不服そうにほっぺたを膨らませる。
話を振られて、アレルヤはじいっとソランを見た。ソランもアレルヤをみつめる。
ぷうっとふくれた頬は今にも破裂しそうだったが、ロックオンが親指と人差し指でつまんで空気は桜色をした唇から抜けて行く。ふにふにと柔らかそうで、アレルヤもつまんでみたくなった。
「なーにぶーたれてんだ?」
「……にぃ、ひとりでいい」
「お前がアレルヤを連れて行って、何買うか教えてやんねーといけないんだぞ?」
「う……わかった……」
「よしっじゃあ決まりだ!今日はソランとアレルヤの初めてのおつかいだ!」
ロックオンは刹那を抱き上げて、お出かけの準備だーっとキッチンを出て行った。
「…………僕が?」
突然決まってしまった本日の予定に、アレルヤは目をまんまると開いて、クリスとフェルトに確認を仰いだ。


13.04.09