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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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聞いてはいけないことだったのだろうか……とアレルヤは内心でソランの様子を伺う。
「かえろ」
しかしソランは以前と変わらない様子でアレルヤの先を進んでいった。
枯れ柳の丘をソランは下って行く。なだらかな起伏を仰いで足取りは軽やかに、そしてまたすすき野をかいくぐって、二人はホームへと辿り着いた。
冬越しの祭りを控えた街に比べ、ホームの方はいささか静かだ。
ちょうど年少組のお昼寝の時間だったのだろうか、ソランは荷物をアレルヤに託して静かに皆が眠っている昼寝部屋へと入って行く。
乾燥した空気は冷え切っていて、最近は洗濯物がよく乾かない。
壁の街は日照時間が短いような気がする。冬のせいもあるだろうが、昨日から干していたものをやっとロックオンが取り込んでいた。
「おかえり」
たくさんの子供用の服は一見しただけでは誰が誰のかわからない。タグに名前を書いてあるが、ロックオンでなければそれをきちんとそれぞれのタンスにしまうのは容易な事では無いだろう。
「遅かったな。ソランと一緒に、何処まで行ってきたんだ?」
「ええと……枯れ柳がある丘まで」
そうアレルヤが言うと、ロックオンはああ、と納得の声を出した。
「あいつ、またマリナの墓に行ってたのな」
「……誰なんですか?マリナって」
「俺たちの先輩灰羽。三年前に巣立った」
「巣立った……?」
聞き慣れない言葉使いだ。
訝しむようにしてアレルヤはまた鸚鵡返しをした。
そんなアレルヤをロックオンは邪険にせず親切に教えてくれる。
「灰羽はな、ある日『すべて良し』と感じると『巣立ちの日』を迎えて、壁の向こうのどこかへと旅立っていくという伝承があるんだ」
「まあ実際はどうだか知らないけど……猫が死期を悟って姿を消すように、ある日灰羽はふっといなくなるんだ」
「みんなに感謝の贈り物をして、いなくなるんだ。」
「おくりもの?」
「そう。巣立つ灰羽によってまちまちだけど、マリナからのおくりものは、ソランだった」
「マリナは体が弱くて、だから俺みたいにこうしてホームで勉強を教えたりとかしてたんだけど……ソランの繭を見付けて、名前を付けて……巣立ってったんだ」
「………………どうしていなくなるの?」
「わからない。灰羽の務めを果たしたからとかいろいろ言われるけど」
「マリナ、さん、は……何かに満足したのかな……?」
「それは、俺には……」
「他の人のお墓は?マリナさん意外にも巣立った人がいるんでしょう」
「……いや、マリナだけなんだ」
「え?」
「ふつう、墓は作らない。死んだ訳じゃないから」
「それじゃあ……」
「灰羽が巣立つ事象はいつか必ず俺たちは体験する事だ。だからかな……悲しい、って、思えないんだ」
「どういうこと?」
「形式上は、慶事にあたる。いなくなって寂しくはなるが、誰も哀しまない」
「………………」
「そんな顔するなよ、最初は受け入れられないかもしれないが、これが俺たちにとっては普通なんだ」
「ロックオンも……いつかいなくなっちゃうの?」
「……かもな」
「クリスも、フェルトも、ソランも……僕も」
「大丈夫、今は、自分のやるべき道を探すといい」
やるべき道、やるべき事。
アレルヤは今だそれを見つける事が出来なかった。
もうすぐ冬越しの祭り……クリスマスだ。
クリスマスが終われば、新年がやってくる。
ぽつりとアレルヤの心に染みが浮かぶ。
黒いその染みが、大きくなってしまう前に。


13.06.18