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00腐/Ailes Grises/ニルアレ

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「っご、ごめ、ごめんなさい……ははっ」

吹き出すように笑ってしまったことをアレルヤが二人に謝罪する。
何かに気付けたような、何処かふっきれたような、アレルヤは目尻に涙を溜めて、すぅ、と息を吸い込む。

「些細なこと……なんだ」
「そうなんだ!些細なすれ違いなのに、こいつは……!」
「あはは、そうだよね。……ほんとにそうだ」

自分はそもそも、すれ違う以前の話なのだろうけれど、これから先彼が思う方向へと、自分は一緒に進めないのだろう、とアレルヤは少し悟る。
しかし彼が大切だという気持ちだけは、目の前にいる二人と変わらないという事だけはいま解ることが出来た。
なんだ、何も悪い事では無いじゃないか。
彼が、誰を思っていようとも。
彼の心の片隅に、刹那とティエリアがいるように。
クリスやフェルト、ホームのみんな、町の人々。
彼の目には、ちゃんと見えている。
その中に、きっと自分もいる。そう願いたい。

「ごめん、帰らなきゃ。また……話せる……?」

ソファから立ち上がったアレルヤは、すっと二人へと手を差し伸べる。
突然のアレルヤの言動に何が起こったか分かっていない二人であったが、もちろん、と出されたアレルヤの手を握り返した。

「僕はアレルヤ。よろしくね」
「よろしく、アレルヤ」

アレルヤは自分の中で答えを出した。
それがどうなるか、自分でも分からない。
だだこのひとつの想いの丈を、彼に伝えたい。
真っ直ぐ伝えられるだろうか。
真っ直ぐ、見詰められるだろうか。
真っ暗闇の中で、もう一度見付けてくれるだろうか。



*****



「ただいま……」

廃工場を出てティエリアに教えてもらった道に進むと、考えていた距離よりすんなりとホームに帰れた。
しかしとっぷりと日は暮れに暮れ寒さがより一層身に沁みる。
ホームの入り口に入ってもまだアレルヤの息は白かった。
名札を外出の所から移動させていると、暖かな黄身を帯びた電球が裸のままぶら下がっている玄関先までひょっこりとロックオンは現れる。

「ああ、おかえり、アレルヤ」
「ロックオン」

驚いたのはアレルヤだった。
玄関といってもみんなが集まるリビングキッチンまで距離がある。
まるでそこでアレルヤの帰りを待っていてくれたかのようにロックオンは現れたのだ。

「……どうかしたか?今日はお前の好きなシチューだぞ」

しかし何でも無いようにロックオンは振る舞う。
それが少し、アレルヤには淋しく思えた。
待っていてくれたなら、そう言ってくれればいいのに。
自分の好物で引き寄せようとするなんてずるい。
どうってことない普段通りの会話だというのに、淋しいと感じるのと同時に遣る瀬無い気持ちになった。

「今日……街で、刹那に会いました」
「そっか……。元気にしてたか?あいつなかなか里帰りしないから心配で……あっじゃあ、廃工場の事は聞いた?あそこは刹那がねぐらにしてるんだがな、実は……」

そしてはぐらかすようにロックオンは言葉を連ねるのだ。
嘘を塗り重ねるように、アレルヤに言い聞かせるように、それでも微笑いながら語り掛ける。

「ロックオン、あのね」

アレルヤは気付いたばかりの、彼を想うただひとつの思いのたけを言葉にしようと思った。
もし、これが本当に些細なすれ違いなのなら。
もし、これが馬鹿な自分の勘違いであるのなら。

「ロックオンが最近僕に優しくするのは、僕が病気だから?」

「それともぼくが、あなたと、おなじだから?」

どちらも同じ意味だ。
だが敢えてアレルヤは言葉を伏せる。
勘違いなら、それでいい。
病で気が狂っていたなら、それでいい。
その前から好きだなんて、言わない。

「それ、は……」

ロックオンは、答えられなかった。
どういう答えが帰って来るかアレルヤには予想がつかない。

「ぼくだから、っていってもらえると、うれしいんです」

勘違いだとしても、今、

「……ふふ、なーんて!今日シチューなんですか?やったぁ僕もうお腹ぺこぺこなんです」

そうして一日が終わった。
曖昧な気持ちは、さして相手に伝わる事も無い。
それで良かった。わかってもらうつもりも無かった。
ただ、ほんのすこし。
言葉にしてみたかっただけだった。

冬の祭が、始まる。


13.12.16〜14.04.16