Long. Long. Long.
「なんだ、あの船は。」
ユニオンジャックの掲げられた巨大な船。
そのなかで一際目立つ衣装を来た男がそう呟く。男____アーサー カークランドは500mほど離れた海に浮かぶ船を望遠鏡から見つめていた。帆も無地、船も装飾一つ無い、鉄板もあまり使われていない、甲板にも誰もいない。
なんだあれは、密入国者の船か?
進行方向は西、か…イギリス行きならば不法入国させるわけにはいかないな。という大義名分をぶら下げて、すぐ放り投げる。
あぁ、丁度退屈してたところだ。
「西へ舵を取れ!目標は約500m先の船だ!」
さあ、何が乗っているんだろうか。
「一気に攻め込め!中を制圧するぞ!俺に続け!!」
威勢のいい声が船上にこだまして響いて散る。
中に突入したヤツの声が耳に入った、
「動くな!動いたらそいつから脚を落として海に落とすぞ!」
17人、くらいか。先に入った仲間に続いて入る。怯えた顔の女、子供、老人、
庇う様に立つ、黒髪の、男。
ここのリーダーはこいつか。
ただひたすらに黒い瞳に目を奪われて立ち尽くす。
アジア人…中国か、?日本か…?はたまた…
「何処へ向かっていた?」
…
「国籍は?」
…
「名前は?」
…
「何しに来た?」
…
面白え、今晩の相手はこいつだ。
どんな手ぇ使っても吐かせてやる。
「全員縛り上げて看板の手摺にでも繋いでおけ。
…この男は俺の部屋に連れていけ。
もちろん、目隠しをするのと吊り上げておくのを忘れるなよ。」
本田菊の長い長い夜が始まる。
作品名:Long. Long. Long. 作家名:カヲ