友情≧愛情 ひよ恋より
好きな人ができた。
それだけで自分の世界が大きくかわるように感じる。
その人のことを想うと、ドキドキが止まらなくて……
ワクワクもする……
でもね。
その好きな人の好きな人があなたの友達だったら、あなたならどうする?
諦める?それとも……
私は、友達はなによりも大事。
それともなんて絶対ない!
でも、だからといってあっさり引き下がれるのかというのは、どうなのかな?
それに、
私の好きな人は私の友人のことが好きだけど、私の友人はそうではなくて、しかも彼氏もいて……
これは……どう考えればいいのかな?
★★★
「おはよう! りっちゃん」
笑顔で言うのは私の親友のひより。
背が小さくて、身長は僅か140センチ。
「おはよう! ひより」
元気よく、私は答える。
「ねぇ、その……二戸部君の件って大丈夫だったの?」
……
この間、ちょっとした事件があった。
私の好きな人である二戸部君が、ついにひよりに告白した。
そして、高熱出して倒れて、
いろいろとひよりとあったらしい……
「うん……。 大丈夫……」
そういうひよりだけど、やっぱり曇った表情になる。
何もなかったはずなんてないよ……
二戸部君ってけっこうきついし、ひよりは誰かを悲しませるのをとっても嫌がるいい子だし……
なんか、
自分の好きな人(二戸部君のこと)のことよりもひよりのことの方が心配だ。
「……ひよりはさ、強くなったよね?」
そう私が言うと、
「えっ?」
「だってさ、去年までだったらさ、ひたすら逃げてたじゃん。でも、最近は一生懸命自分で戦おうとしている……そんな感じがするの……」
「……私はいままでいろんな人に迷惑をかけてきたよね。りっちゃんにも、広瀬君にも、コウ君にも……。 でも、もう逃げてばかりの自分は嫌なの! 私のせいで今回もいろいろ空回りしちゃったけど……でも、その責任は自分でとりたい……。そう、強く思うんだ」
私はひよりの顔を見る。
いつになく、真剣で、おどおどしていないひよりだった。
ひよりを変えたのは、やっぱ「結心」という「彼」の存在なのだろうか?
そう考えると少し、胸が疼く。
だって、
私が一番……ひよりのこと……好きなんだから……
「あのね。りっちゃん。すごく変なことなんだけど、広瀬君と付き合ったことは嬉しいことでもあったけど、『自分からやらなきゃいけないこと』の連続だったの。そう見えなかったかもしれないけど、手をつなぐのも、その……キス……されたあと、できるだけ今まで通りに広瀬君にせっすることも……。付き合うって私、こういうこと何だと思うんだ。 受け身じゃダメなの。自分から動かないと……だからね……その変わったんだと思う」
「それに……」
「それに?」
「私がここまでこれたのは全部りっちゃんのおかげなんだよ! りっちゃんがいなかったら、今、こうして広瀬君と付き合うこともなかったし、自分から動くことは絶対なかった……。だからね、私、広瀬君は「お父さん」みたいな存在で、りっちゃんは「お母さん」みたいな存在だと思うんだ」
私は茫然としてしまった。
正直、ひよりは彼氏を作って、もっとウキウキな感じだったんだと思った。
世間でいうところの、「付き合う」とひよりの「付き合う」は似ているようで違う。
「覚悟」なんだ……
そう感じた。
「ひよりは……いつの間にか強くなったね……。それに私よりずっとしっかりしている……。私なんか、二戸部君への気持ちを理解した途端……頭がこんがらがっちゃって……でも、私も、勇気もってみるよ……。「あたって、砕けろ」だよね?」
そういうとひよりはぶんぶんと顔を横に振って、
「そんなことないよ。「砕ける」なんてことはない…… コウ君とりっちゃんはお似合いだもん。 仲いいし。 でも、コウ君はわたしのせいで混乱しちゃったみたい……ほんと、りっちゃんも、コウ君も、広瀬くんにもごめんなさい……」
そういうとひよりは頭を下げる。
「ち、ちょっとひより。そんな……頭なんて下げなくていいよ。私は、ちゃんと伝えてないもの……。 ひよりは一つ誤解していることがあるよ……」
そういう私に、
「誤解?」
「そう、私は「ひよりに嫉妬」したんだよ……。ひよりは私よりも、可愛いし、素直だし……。私は、ずっとひよりに憧れてたの。女の子っぽいところも……。それだけ、ひよりは「ひよりの魅力をみんな知れば絶対好きになる」っていう自覚があるの……」
そう私がいうと、
「そんなの……そんなこといったら、私の方がそうりっちゃんのこと、皆好きになるって思うよ」
そういうと、2人して抱き合った。
友人同士でこういうことするのって珍しいかもしれない……
でも、こうしたがった……
「律花っていい子だよね」
そんな風にいわれて、いいように扱われてたあの頃、いいようのない孤独の中から、見つけてくれたのは、ひより。
今後どんなことがあっても、ひよりのことは大事にしたい……。
そう強く思った。
★★★
「二戸部君」
私は、帰り道公園に二戸部君を呼び出した。
「……なんだよ……こんなとこに呼び出して……」
「えっとてその……。前に私、「二戸部君が前に進まなきゃ、私も前に進めないじゃない!」っていったよね?」
「そんなこと……いってたっけ?」
「……いったよ。あれ、どういう意味かわかるよね?」
「……よくわかんないだけど……」
「あれは、つまり。私は、二戸部君が好き……っていうことなの!」
そう私が思い切っていうと、二戸部君は私の顔をまじまじと見る。
「……」
暫く沈黙が続く。
そんな中、二戸部君が話しかけた。
「『好き』……っていう言葉はよくわからないな」
「えっ?」
「本当に分からないよ……。 俺だって、何で、広瀬がいるの、西山に告白したのか……どう考えたって、見込みがないはずなのに……なんで……。広瀬と西山がキスしたって話聞いた時も、なぜかムカムカして……ホント、俺らしくない……」
「そんなものじゃないの?」
「えっ?」
「私だって、よく分からないよ……気が付いたら、私の中で二戸部君の存在が大きくなっていって……「ひよりを想っている」っていうのがわかってから、「好き」って自覚したんだよ。私……だから、わかんないものだと思う」
「……」
二戸部君は真剣に聞いている。
「今すぐに答えて欲しいわけじゃないの……。ただ、私の気持ちは知って欲しいから……。ひよりは、私の大切な人だから……だから、二戸部君の気持ちはすごく分かるの……迷惑だったら、もう、私も何も言わないけど……」
そういうと二戸部君は、
「それは……キツイかな……。あいつのこと、話せるのってアンタくらいじゃん」
そういう彼の台詞に、
「……。」
私はなんて答えたらいいかわからなくなる。
作品名:友情≧愛情 ひよ恋より 作家名:kureha