Wizard//Magica Wish −3−
「………」
深夜、暗闇の公園に無数に立っている銀杏の木の枝先に一つの微かな輝きがあった。
その輝きは、その真下のベンチに寝ている人物に向けられている。
無論、そのベンチで寝ている人物は相当疲れていたのか、この事態には全く気づくことなく熟睡していた。
「………ぐぅ…」
「………」
木上にいる少女は、あるものを両手で構えていた。黒く、独特な形。
その輝きの正体は拳銃の銃口であった。
少女は外すまいとゆっくりと引き金を引く。
−ドオン…−
静寂の公園に一つの銃撃音が響き渡った。
少女は一切表情を歪めることなく、引き金を引いたのだ。
銃口からは煙がうっすらと立っている。
「…これで…終わりね」
「うぅん、ハズレだよ」
「っ!!しまっ」
ふと、後ろから男性の声が聞こえてきた。
振り向くと、そこにはベンチで寝ていた男性、いや、操真 ハルトの姿があった。
しかし、気付いたときにはすでに遅く、少女、暁美ほむら はハルトの拘束の魔法で全身縛られてしまった。
「くっ…放しなさい」
「いやだよ、また睡眠の妨害してくる気でしょ?全く、あれからずっと俺の事付き回してそんなに俺が憎いの?俺、君に何かした覚えないよ?」
「………」
「はぁ…黙秘ね。じゃ、俺は別の場所で寝るから。また俺を殺しに来るのなら相手してあげるよ」
そう言うとハルトは下に降り、何処かへスタスタと歩いていってしまった。
丁度、ほむら にかけられていた拘束魔法が解けたのはハルトの姿が全く見えなくなった直後である。
「逃がした…けど、私は絶対にあなたをこれ以上野放しにはしない…。何回も繰り返してようやく姿を現したのだから…今度は逃がさないわよ。操真 ハルト」
−−−5日前
「ヤバイ…っ!!」
「止めて!ほむらちゃん!!」
魔女の結界内、ほむら は右手に構えた拳銃の引き金を止めることなく、ウィザードに打ち続けていた。まどか は必死に ほむら を静止させようとするが、ほむら は全く相手にしなかった。
「これで終わりよ、ウィザード」
「っ!!」
ほむら は左腕に装着されて銀色の盾からロケットランチャーを取り出し、ウィザードにそれを向けた。今の彼女なら躊躇なく打つ筈だ…そう感じ取った まどか はついに居ても立ってもいられなくなり、動きだした。
「くっ…ここまでか、はぁ…」
「………」
ウィザードは抵抗をするのをやめたのか、完全に戦意を喪失してしまい、その場で膝をついた。ほむら はそんなウィザードに対し、ゆっくりと引き金を引いた…。
「うっ!!」
「『ディフェンド』プリーズ!」
爆音が響き渡る。
ロケット弾が何かに当たった音だ。
「…まだね」
「はぁっはぁっ…危ね、けど、…これで魔力切れだ…はぁっ…はぁっ…」
精神内では諦めていたが、身体の防衛本能が働き無意識中に魔法を発動させていた。
なんとかウィザードは防御魔法でロケット弾を防ぎ切ったが、完全に防いだ訳ではなく、少量ダメージを受けてしまい、気絶する寸前の状態だった。
ほむら はいち早くウィザードがガードしたことを察知したのか、手馴れた手つきで素早く二発目の弾薬をロケットランチャーに装弾する。
そして再び、ウィザードに砲身が向けられた。
「くそ…もう魔法は無理だ…」
「これで、終わる…全てが、今までの…戦いが…!!」
「そこまでだよ!ほむらちゃん!!」
「っ!!まどっ……
…なんのつもりかしら、鹿目まどか」
ほむら はウィザードにロケットランチャーを向けながら横を見る。
そこには、自分に対して弓矢を向けていた まどか が立っていたのだ。
まどか は必死だったのか酷く興奮しながら矢を ほむら に向ける。
知人に戦意を出すのはこれが初めてで、手の震えが止まらない。
「あなたに私が打てるの?狙いが定まっていないようだけど」
「そ、それ以上ウィザードさんを攻撃するなら、私が ほむらちゃんを打つよ!!?ほ…本気だからね!!?」
「まどか、止めなさい!!今すぐ弓を下ろすの!!」
「落ち着けまどか!!逆にお前がやられるぞ!!」
「はぁ…はぁ…」
二人の声が聞こえてくる…が、全く頭の中に入ってこない。
きっと自分を説得してくれているのだろう。
けど、もし自分がこのまま引き下がってしまえば、間違いなくウィザード、いや、操真 ハルトは殺されてしまう。
まどか は目頭に涙を浮かべ、次第に息遣いが荒くなっていった。
「…せめて…ここから脱出するぐらいなら…っ!!」
「『バインド』プリーズ!」
「えっ…」
「っ!しまった…くっ!!」
ほむら が まどか に気を取られている一瞬の隙にウィザードは魔法を発動させ、ほむら に拘束魔法を使用した。ほむら は全身に魔力でできた鎖が巻かれ身動きができなくなり、ウィザードはその隙に最後の力を振り絞り出口へと走っていく。
「お、おい!ハルト!!」
「っ!!…きょ、杏子…ちゃ…」
出口のすぐ傍に杏子と、今にもウィザードに襲ってきそうな さやか の姿があった。
しかしウィザードには既に戦えるほど体力は残ってはなく、ここで襲われたら一貫の終わりである。
しかし、さやかの態度とは裏腹に、杏子には戦意は無かった。
「…う…今回は…その…見逃してやる…」
「え、杏子!!?あんたこいつをそのまま逃す気!!?」
「…うん、ありがと…いてて…」
そうして、ウィザードはその場から逃げ出すことに成功した。
さやか は後を追おうとしたが、杏子に無言に肩を掴まれ止められた。
「はぁっ…はぁっ…」
まどか は地面に手を付き、大量の汗を出していた。
もしあのまま ほむら がウィザードに攻撃し続けていたなら、自分はどうしていただろうか。
本当に、彼女を止めるために自分が攻撃していたのだろうか。
そんな光景と恐怖が頭の中にとぐろまいていた。
「うっ!!……ふぅ」
ほむら はウィザードの拘束魔法を無理やり解き、出口を向いたがそこには既に彼の姿はなかった。諦めたのか、その長い黒髪を左手になびかせ、ちらっと まどか を見つめた。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
「…あなたには、まだわからない筈…あいつが…ウィザードがどんな存在か…」
そう言い残し、ほむら はどこかへと去っていった。
それと同時に今度は杏子と さやか が興奮が収まらない まどか の元へとやってきた。
「おい!大丈夫か、まどか!!」
「まどか しっかり!!まど…」
「さやか…ちゃ…杏…子ちゃん…私…」
「え?」
「私…ふっ…うぅぅ…私!ほむらちゃんに…ほむらちゃんに…う…うぅ…うあぁぁぁぁぁ!!…あぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁん!!!!」
まどかの目から大量の涙がこぼれ落ち、その場に頭を伏せて大泣きし始めてしまった。
よほど、無意識中に行ってしまった先程の出来事が嫌だったのだろう。
さやか はそんな まどか を優しく抱きしめ、杏子は懐からうまい棒を取り出し、まどか の頭を撫でながら「食うかい?」と、滅多に出さない優しい口調でそれを彼女に差し出した。
深夜、暗闇の公園に無数に立っている銀杏の木の枝先に一つの微かな輝きがあった。
その輝きは、その真下のベンチに寝ている人物に向けられている。
無論、そのベンチで寝ている人物は相当疲れていたのか、この事態には全く気づくことなく熟睡していた。
「………ぐぅ…」
「………」
木上にいる少女は、あるものを両手で構えていた。黒く、独特な形。
その輝きの正体は拳銃の銃口であった。
少女は外すまいとゆっくりと引き金を引く。
−ドオン…−
静寂の公園に一つの銃撃音が響き渡った。
少女は一切表情を歪めることなく、引き金を引いたのだ。
銃口からは煙がうっすらと立っている。
「…これで…終わりね」
「うぅん、ハズレだよ」
「っ!!しまっ」
ふと、後ろから男性の声が聞こえてきた。
振り向くと、そこにはベンチで寝ていた男性、いや、操真 ハルトの姿があった。
しかし、気付いたときにはすでに遅く、少女、暁美ほむら はハルトの拘束の魔法で全身縛られてしまった。
「くっ…放しなさい」
「いやだよ、また睡眠の妨害してくる気でしょ?全く、あれからずっと俺の事付き回してそんなに俺が憎いの?俺、君に何かした覚えないよ?」
「………」
「はぁ…黙秘ね。じゃ、俺は別の場所で寝るから。また俺を殺しに来るのなら相手してあげるよ」
そう言うとハルトは下に降り、何処かへスタスタと歩いていってしまった。
丁度、ほむら にかけられていた拘束魔法が解けたのはハルトの姿が全く見えなくなった直後である。
「逃がした…けど、私は絶対にあなたをこれ以上野放しにはしない…。何回も繰り返してようやく姿を現したのだから…今度は逃がさないわよ。操真 ハルト」
−−−5日前
「ヤバイ…っ!!」
「止めて!ほむらちゃん!!」
魔女の結界内、ほむら は右手に構えた拳銃の引き金を止めることなく、ウィザードに打ち続けていた。まどか は必死に ほむら を静止させようとするが、ほむら は全く相手にしなかった。
「これで終わりよ、ウィザード」
「っ!!」
ほむら は左腕に装着されて銀色の盾からロケットランチャーを取り出し、ウィザードにそれを向けた。今の彼女なら躊躇なく打つ筈だ…そう感じ取った まどか はついに居ても立ってもいられなくなり、動きだした。
「くっ…ここまでか、はぁ…」
「………」
ウィザードは抵抗をするのをやめたのか、完全に戦意を喪失してしまい、その場で膝をついた。ほむら はそんなウィザードに対し、ゆっくりと引き金を引いた…。
「うっ!!」
「『ディフェンド』プリーズ!」
爆音が響き渡る。
ロケット弾が何かに当たった音だ。
「…まだね」
「はぁっはぁっ…危ね、けど、…これで魔力切れだ…はぁっ…はぁっ…」
精神内では諦めていたが、身体の防衛本能が働き無意識中に魔法を発動させていた。
なんとかウィザードは防御魔法でロケット弾を防ぎ切ったが、完全に防いだ訳ではなく、少量ダメージを受けてしまい、気絶する寸前の状態だった。
ほむら はいち早くウィザードがガードしたことを察知したのか、手馴れた手つきで素早く二発目の弾薬をロケットランチャーに装弾する。
そして再び、ウィザードに砲身が向けられた。
「くそ…もう魔法は無理だ…」
「これで、終わる…全てが、今までの…戦いが…!!」
「そこまでだよ!ほむらちゃん!!」
「っ!!まどっ……
…なんのつもりかしら、鹿目まどか」
ほむら はウィザードにロケットランチャーを向けながら横を見る。
そこには、自分に対して弓矢を向けていた まどか が立っていたのだ。
まどか は必死だったのか酷く興奮しながら矢を ほむら に向ける。
知人に戦意を出すのはこれが初めてで、手の震えが止まらない。
「あなたに私が打てるの?狙いが定まっていないようだけど」
「そ、それ以上ウィザードさんを攻撃するなら、私が ほむらちゃんを打つよ!!?ほ…本気だからね!!?」
「まどか、止めなさい!!今すぐ弓を下ろすの!!」
「落ち着けまどか!!逆にお前がやられるぞ!!」
「はぁ…はぁ…」
二人の声が聞こえてくる…が、全く頭の中に入ってこない。
きっと自分を説得してくれているのだろう。
けど、もし自分がこのまま引き下がってしまえば、間違いなくウィザード、いや、操真 ハルトは殺されてしまう。
まどか は目頭に涙を浮かべ、次第に息遣いが荒くなっていった。
「…せめて…ここから脱出するぐらいなら…っ!!」
「『バインド』プリーズ!」
「えっ…」
「っ!しまった…くっ!!」
ほむら が まどか に気を取られている一瞬の隙にウィザードは魔法を発動させ、ほむら に拘束魔法を使用した。ほむら は全身に魔力でできた鎖が巻かれ身動きができなくなり、ウィザードはその隙に最後の力を振り絞り出口へと走っていく。
「お、おい!ハルト!!」
「っ!!…きょ、杏子…ちゃ…」
出口のすぐ傍に杏子と、今にもウィザードに襲ってきそうな さやか の姿があった。
しかしウィザードには既に戦えるほど体力は残ってはなく、ここで襲われたら一貫の終わりである。
しかし、さやかの態度とは裏腹に、杏子には戦意は無かった。
「…う…今回は…その…見逃してやる…」
「え、杏子!!?あんたこいつをそのまま逃す気!!?」
「…うん、ありがと…いてて…」
そうして、ウィザードはその場から逃げ出すことに成功した。
さやか は後を追おうとしたが、杏子に無言に肩を掴まれ止められた。
「はぁっ…はぁっ…」
まどか は地面に手を付き、大量の汗を出していた。
もしあのまま ほむら がウィザードに攻撃し続けていたなら、自分はどうしていただろうか。
本当に、彼女を止めるために自分が攻撃していたのだろうか。
そんな光景と恐怖が頭の中にとぐろまいていた。
「うっ!!……ふぅ」
ほむら はウィザードの拘束魔法を無理やり解き、出口を向いたがそこには既に彼の姿はなかった。諦めたのか、その長い黒髪を左手になびかせ、ちらっと まどか を見つめた。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
「…あなたには、まだわからない筈…あいつが…ウィザードがどんな存在か…」
そう言い残し、ほむら はどこかへと去っていった。
それと同時に今度は杏子と さやか が興奮が収まらない まどか の元へとやってきた。
「おい!大丈夫か、まどか!!」
「まどか しっかり!!まど…」
「さやか…ちゃ…杏…子ちゃん…私…」
「え?」
「私…ふっ…うぅぅ…私!ほむらちゃんに…ほむらちゃんに…う…うぅ…うあぁぁぁぁぁ!!…あぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁん!!!!」
まどかの目から大量の涙がこぼれ落ち、その場に頭を伏せて大泣きし始めてしまった。
よほど、無意識中に行ってしまった先程の出来事が嫌だったのだろう。
さやか はそんな まどか を優しく抱きしめ、杏子は懐からうまい棒を取り出し、まどか の頭を撫でながら「食うかい?」と、滅多に出さない優しい口調でそれを彼女に差し出した。
作品名:Wizard//Magica Wish −3− 作家名:a-o-w