フェンリルvsミロ
北の人喰い狼vs真紅の蠍
ミロはいつのまにか狼の群れに囲まれていた。
『ガルルル・・・!!』
『なんだ、こいつらは・・・?』
そこへ、
『おい、ギング、そんな不味そうな人間を食べたら、腹を壊すぜ!止めときな!』
1人の少年が狼の群れの背後から現れた。
『ほう、俺が不味そうか・・・』
『ああ、お前は見るからに不味そうだからな!』
『ふっ!面白いことを言うじゃないか?、するとお前が北の人食い狼・アリオトのフェンリルだな?』
『その通りだ!』
『俺はスコーピオンのミロだ!お前を倒しに来た』
『へん、この俺を倒すだと・・・人間風情が狼に勝てると思うな!!行くぞ、ギング!!』
フェンリルはギングを伴って、ミロに襲いかかった。
『喰らえ!ウルフクルエルティクローウ!!』
無数の狼の牙がミロに襲いかかる。
さらに、技を繰り出すフェンリル。
『ノーザン群狼拳!!』
無数の狼たちがミロに襲いかかる。
『・・・なるほどな、確かにお前は狼だ、だが・・・!!』
ミロはマントで狼達をバサァと振り払うと、フェンリルに向き技を放った。
『リストリクション!!』
『な・・・にい・・・!?』
突如、ミロの技により、体の自由を奪われたフェンリル。
体が動かない。
『狼よりも、人間の方が強いことを証明してやろうか?』
『なっ!なにをする気だ・・・!?』
『なあに、ちょっと動きを封じただけだ、心配するな。なにもしない。・・・俺を信じろ』
『なんだと!?お前を信じろだと・・・!?』
『ああ、それに俺は、お前と悠長に遊んでるヒマはないんでね、アテナの命がかかっているんだ』
『ふん!俺は、人間なんか信じねえ!お前もアテナも、こいつらに食べられてしまえ!!』
なぜか人間不信な頑ななフェンリルの態度に、ミロは興味を覚えた。
『・・・お前・・・、なにか訳ありのようだな?』
そんなミロを睨みつけ、フェンリルは啖呵を切った。
『お前には関係のないことだ!俺が信じるのは、こいつら狼たちのみだ!!人間なんか・・・人間なんか・・・みんな食われてしまえばいい!!』
そんな人間不信なフェンリルの態度に、ミロも、少々お灸を据える必要があるなと思った。
(仕方ないな・・・あまり手荒なことはしたくないが、時間もない。ここはさっさと終わらせて、オーディンサファイアを手に入れるか・・・)
そしてミロは、フェンリルに向かい、その指をスッと掲げると
『甘ったれるな!!どんな辛い過去があろうと、狼に人間を襲わせ、食べさせるなど、言語道断!!食らえ!真紅の衝撃!!』
『・・・グッ!?』
ミロがその赤い爪をフェンリル目掛け突き刺すと、途端、もの凄い激痛がフェンリルを襲った。
『・・・!!!!』
『さあ、発狂か?、死か?』
『・・・どっちも・・・お断りだ・・・・!!』
フェンリルは体中を襲う激痛に耐えつつも、唸った。
『・・・そうか・・・ならば死ぬか・・・?』
『・・・っ!?』
そしてミロは、最後の一撃を・・・!!
『これで最後だ!真紅の衝撃!スカーレットニードル!!!』
ミロはフェンリルの丁度心臓の辺りに、最後の一針を刺した。
今まで以上の凄まじい激痛がフェンリルを襲う!
たまらずその場に倒れるフェンリル。
「・・・くーん・・・くーん・・・」
その頬をギングが心配そうに舐めている。
(・・・俺は・・・・死ぬのか・・・・?)
フェンリルは激痛で薄れ逝く意識の中、ふとそう思った。
(・・・ごめん、ギング・・・・もう、お前と一緒に・・・狩りをしたり、遊んだり、できなくなっちまったな・・・・・)
そしてフェンリルは、その瞳を静かに閉じた。
「・・・・く~ん・・・?」
ギングは危惧した。
もう2度と、フェンリルの瞳が開かないのではないかと・・・・
そして、バッとミロに向き直ると、その牙を剥いた。
「がるるる・・・・!!」
『ほう、主人の仇を討つか?狼?』
ギングがミロに襲いかかろうと、飛びかかろうとした瞬間に、
『リストリクション!』
ミロの技で動きを封じられた。
『まあ、そう慌てるな。無駄に命を落とすこともあるまい。それに・・・・』
と、倒れるフェンリルに近づき、
『今のは真央点を突いたのだ。安心しろ、死んではいない。ただ、こいつに少し大人しくしてもらいたかったのでな、これを貰うために・・・』
その手には、フェンリルのオーディンサファイアが輝いていた。
そしてミロは、マントをバサァと翻すと、今だ倒れているフェンリルと、威嚇を続けているギングに、軽く一瞥してから、ワルハラ宮殿目指して先を急いだ。