勇者の道は険しい
だが、この国には勇者が居ない。
国王は困り果て、勇者を国民の中から、投票で選ぶことにした。
そして、勇者として、選ばれたのがこの俺である。
国王は勇者になった俺を祝って、武器・防具と支度金が入った封筒をくれた。
俺は喜んだ。だが、その喜びは一瞬の出来事だった。
封筒の中身を空けて、俺はびっくりした。
なんと、支度金は薬草6個分の代金だった。
こんなんで、どうやって魔王を倒せっていうんだ!!
俺は国王に抗議した。
国王はただひたすらに、同じ言葉しか返さなかった。
「勇者よ。魔王を倒し、この国にどうか平和をもたらしてくれ」
しかも、魔王が住む城の場所すら教えてくれない。なんとも理不尽だ。
せめて、魔王を倒すための訓練くらいあるんだろうな?と国王に抗議した。
だが、返ってきた言葉は・・・。
「勇者よ。魔王を倒し・・・」
俺はただ呆然とした。
仕方なく重い足取りで城を出て、村人から情報を集めることにした。
村人に話しかけて一つ気づいたことがある。
「勇者!勇者様!勇者殿」
など、主語には必ず勇者という言葉が含まれるのである。
そして、何度話しても、王様と同じで、永遠と同じ説明をするのみであった。
だが、たった一つわかったことは、魔王は北に居るという。
北ってどこだよ!!
俺は思わず叫びたくなった。世界は広いんだ。
北って言うだけで、魔王の居場所なんてわかるはずがない!
そもそも、国王こそが悪。いや、魔王じゃないのか?
俺は、だんだんと、そう考えるようになってきた。
だが、怒っても仕方がない。まずは、資金調達をすることにした。
お金さえあれば、世の中、なんとでもなるものである。
町を一歩出れば、モンスター達がわんさか居るのだ。
モンスターを倒していけば、自然にお金やレベルが上がるのである。これでなんとかなる。
そんなことを考えながら、町から数歩くらい歩くと、目の前に突如、青い物体が現れた。スライムである。
俺は悪戦苦闘の末、スライムを倒した。だが、お金どころか経験地すら入らない。
ゲーム世界において、定番である敵討伐時の報酬が全くないのである・・・。
俺は青ざめた・・・。
経験地が入らないということは、レベルは1のまま・・・。
しかも、所持金は薬草6個分・・・。
もう、電源を抜くしかない。俺はそう思った。
だが、ここで、村人の言葉をもう一度、よく思い返した。
そうだ!ルーダの酒場だ!お金を稼ぐなら、あそこしかない!
俺は慌てて、町に戻った。
見えた!あれがルイーダの酒場だ!
俺は今日あった嫌な出来事と早くオサラバするため、酒場のドアを勢いよく開けた。
店員はポニーテールがとても似合う可愛いお姉さんだ。
俺は、店員さんに、これまで起った理不尽な出来事を全て話した。
どうか、俺を雇ってくれ!!わらにもすがる思いだった。
そして、店員さんが、にっこりと微笑んで、こう答えた。
「勇者はお断りです」
なん・・だと・・