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【APH】実は付き合ってる加仏

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まったく。せっかくカナダと二人きりでムフフな時間を過ごそうとやってきたのに。
そう胸の内で大きくため息をついたフランスは、その原因であるアメリカを見やった。
「……」
 イギリスさんとケンカしたみたいで、とカナダに申し訳なさそうに説明されたアメリカはまだ夕刻だというのに既に出来上がっていて、机の上に突っ伏してむにゃむにゃ何事か唸っている。
「まぁ珍しいアメリカ見られたから、いいか」
アメリカの隣に座ったフランスは、赤く染まっている頬をぷにぷにとつついてやる。さすがに嫌がる素振りを見せたアメリカは目を開いて、寝ぼけた視線をこちらに寄越した。
「ふらんす…」
「よぉアメリカ」
「きみに、かなだは、わたさない…んだぞ…」
「……」
 それは単なる酔っ払いの、しかも子供みたいな独占欲に違いない発言に、何故か動揺してしまったフランスはアメリカの唐突な動きに反応が遅れてしまった。
「うわっ?」
 勢いよく抱きつかれてソファに押し倒されて視界が反転する。しかし予想していた衝撃は柔らかなソファのおかげで抑えられ、むしろそのダイヴが心地かったりした。
「おれをたおしてからじゃないと…わたさないんだぞ。でもおれはひーろー、だから、かんたんには、たおされないんだ、ぞ」
 寝言でもヒーローを謳うアメリカはまだ怪しい呂律で何か呟いていたが、瞼にはあっさりと負けてしまった。アメリカはフランスを押し倒すだけしておいて、そのままフランスの胸を枕にしてしまったのだ。
「……案外聡い、かと思っちゃったじゃん」
 まったく、と すかすかと寝息を立て始めたアメリカの頭を撫でて、眼鏡を取ってやる。
寝顔にキスでもしてやろうかと思ったが、やっぱり重いアメリカを乗せて起き上がることは難しかった。仕方なく眠ったアメリカとソファに二人で寝転がっていると、ゆらりと人影が現れた。他の国には気配が悟られにくい、カナダだ。
「あ、あの、フランスさん、コーヒー淹れたんです、けど…」
 何故か赤面しながらしかも視線を思いっきり逸らされながら、小さな声でお邪魔でしたかと付け足された。

その後全力で否定したフランスは事情を説明して、カナダにアメリカを退けてもらった。
男のフランスでも重かったのに、やけに軽々とアメリカを持ち上げたカナダを見てふと、いつも彼が抱いているクマ次郎のことを思い出して自然に納得してしまった。
二人でアメリカを客室まで運ぶと、道中寝ていたはずのアメリカはベッドに寝かせられると目を覚ました。うろうろと視線を彷徨わせてカナダを見つけると、パーカーの裾をこどもがぐずるように引っ張る。
「……かな、だ」
「はいはい、おやすみ」
 アメリカが幼い声でカナダに縋ると、それに応えるようにカナダはアメリカの額や頬にキスを落とす。その光景を目の当たりにしたフランスは、胸の奥をちりちりと焦がされた気がした。
たぶん、おそらく、いや確実に。彼らにとっては至って普通の、言ってしまえば当然のことなんだろうけれど。
(お兄さん妬けちゃうんですけど)

「ねぇカナダ君」
「はい?」
 ぱたんと扉を閉めた直後、呼びかけると素直に紫の瞳はこちらを見上げてきた。試しに指先を口元に当ててとんとんと示してみるが、澄んだ瞳で首を傾げられてフランスは呻いた。心では泣いた。
「…キス」
「え?」
「カナダ君からされたことないんだけど?」
「そそそうでしたっけ?」
 一瞬にして顔を真っ赤にしたカナダは咳払いをすると、きりりと顔をひきしめる。まだ耳は赤いけれど抱き寄せる腕は力強くて、フランスは微笑んで目を瞑った。