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カナカナカナと蜩が鳴いている。青空をゆく雲は無く、風も吹かない。傾き色を濃くした太陽がじりじりと地面を焼いている。首筋に浮かんできた汗を拭い、三郎は並んで寝ている雷蔵と八左ヱ門を振り返り、見た。部屋に差し込む西日は二人の足の爪先を少し照らしているが、上半身はすっぽりと日陰に入っている。よくこの暑いのに寝ていられるなと、半ば感心する思いで、大きく上下する八左ヱ門の胸を見る。雷蔵は服を着ているが、八左ヱ門は寝る前に暑いと言って着物を脱いでしまったので、上半身は何も着けていない。あんな風に腹を出して寝て…昼に冷やした瓜を食べていたから、あとで腹を壊すかも知れない。全く仕方ない、と立ち上がり、脱ぎ散らかされたままの八左ヱ門の着物を拾い、腹の上に掛けてやった。ううん、と八左ヱ門が唸って、ぐぐっと身体に力が入るのが分かる。伸びをするように上がった手が、顔を覗き込んでいた三郎の頬を掠めると、八左ヱ門の目がうっすらと開いた。すまん起こしたか、と囁くように話しかける。八左ヱ門は三郎の声に目を二度瞬かせ、蜩が鳴いていると呟いた。その眠そうな目を見つめ、もうそろそろ日が暮れるぞ、と三郎は教えてやった。それならば雷蔵も起こさないと、と八左ヱ門の手が雷蔵の肩に伸びる。それを三郎は捕まえて引き寄せると、雷蔵が起きる前にと笑って八左ヱ門に口付けた。八左ヱ門がぎゅっと目を閉じる。その眉間に出来た皺に唇を押し付けていると、視界の端に雷蔵が笑っているのが見えた。いつの間に起きていたのか、三郎と視線が交わると、起きてるよ、と穏やかな声で言う。三郎は肩を竦めると、八左ヱ門の手を離し雷蔵にその場所を譲った。雷蔵が八左ヱ門の頬にゆっくりと口付けながら、蜩が鳴いているねと言った。秋が近付いてきているね、と囁いた。まるで子犬がじゃれているように重なり合う二人の背中を見ているのに飽きて、三郎は雷蔵ごと八左ヱ門を抱きしめた。重い、と文句を言う八左ヱ門の声に重なるように、夕暮れの空に蜩の声が高く響いていた。
作品名: 作家名:aocrot