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僕とあなたが0距離になる時

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最近のハデス先生はどこかおかしい。藤君や美作君とは普段と同じように話をするのに僕とは何故かしてくれない。いや、僕の話を聞いているみたいではあるが、視線が僕に定まっていない。どこか別のところを見るばかりで僕と目を合わせてくれないのだ。それにも関わらず、先生の視線を感じる数も多くなった。というのも僕と会話しているときではなく、僕から離れた場所から僕が気付くか気付かないかの距離で僕を見ている。時々目が合うと、何も無かったかのようにすぐ視線を逸らし、どこかに行ってしまう。何かしたんだろうか?と自分の記憶に問いかけてみても思い当たる節は無い。
「明日葉君。」
不意に名前を呼ばれ、驚いて振り返ると、そこには少し気落ちしたような鏑木さんがいた。
「鏑木さん?どうかしたの?」
「今、保健室に行ってきたんだけど、先生元気が無いみたいで・・・明日葉君、私達の中でも一番先生と仲良いでしょ?だから何か知らないかな〜って思って・・・」
先生と一番仲が良い、と言われたことには正直少し嬉しかった。だけど鏑木さんが先生のことを心配していること、先生に元気が無いのに自分が気付かなかったことに何だか無性にイライラした。
「さあ、何でかな。僕も知らないよ。」
つい素っ気無く答えた僕を鏑木さんは少し驚いたように見ていたが、そっかと小さく苦笑した。
「そうだよね。仲が良くても分かんないことあるもんね。ごめんね、変なこと聞いちゃって。」
「ううん、別にいいよ。」
素直に謝られてさっき素っ気無く答えたことを申し訳なく思った。
「それでもしよかったらなんだけど、明日葉君、一度先生の所行ってみてくれないかな?明日葉君になら先生も何か話してくれるかもしれないし。」
「それは、別に構わないけど。」
「よかった!先生のこと、お願いね。」
「・・・うん、分かった。」
ハデス先生に避けられてるように感じ始めた頃から保健室に立ち寄るのを控えるようにしていたため、しばらく行ってないので言い訳があるのは少し気持ちが軽くなった。
「それじゃあ今から先生の所行ってみるよ。」
「うん。」
鏑木さんに挨拶をすると、僕はすぐそこを立ち去って保健室に向かうことにした。








「失礼します。先生いますか?」
前まで普通に開けることの出来た保健室の扉が何故か今日は少し重く感じられた。気のせいだと扉を開けてみると、そこには前より少し暗い雰囲気を纏ったハデス先生がいた。
「やあ、明日葉君、いらっしゃい。」
先生の笑顔は弱々しくて、いつもと同じ様に言ってくれたその声も覇気が無かった。
「先生、どこか具合でも悪いんですか?」
「え、そんなことないよ。明日葉君の気のせいじゃないかな?」
そういった先生はやっぱり僕に目を合わせてくれなくて、少し悲しくなる。それが少し顔に出ていたのだろうか、先生が僕の顔を一瞬チラと窺うように見た時、驚いたようにその動きが止まった。
「あ、明日葉君どうしたの?」
「それはこっちのセリフです。」
泣くのを堪えて言ったそれは少し情けなかったけれど、その時は気にならなかった。
それよりも先生に僕を見てほしかった。
ちゃんと僕の話を聞いて欲しかった。
「先生はどうして僕を避けるんですか?僕、先生の気に障るようなことしましたか?」
「べ、べつに僕は明日葉君を避けてなんか・・・」
「避けてるじゃないですか!僕と話してる時別の場所を見てるし、目が合ってもすぐ逸らすじゃないですか!それのどこが避けてないって言えるんですか?」
そう言ってて気がついた。
(ああ、僕は、先生が好きなんだ。)
鏑木さんが先生の異変に僕より先に気付いたのに苛立ったのも、先生に僕を見てほしかったのも、きっとそういうことなんだ。
「あ、明日葉君。」
ハデス先生は困ったようにしばらく視線を彷徨わせると、僕をまっすぐと見つめた。
「明日葉君。僕は今まであまり人と話したことがないから上手く君に伝わるかわからないけど、それでも聞いてくれる?僕の気持ちを。」
僕は先生のそのまっすぐな視線に少しドギマギしながらコク、と頷いた。
「僕は、あまり人と話すことがなかったって今言ったよね?そのせいで今まで慕ってくれる生徒は愚か、友達すら鈍や経一以外皆無と言ってもいい。でも、この学校に来て守りたい人やものがたくさん増えた。でもね、守りたい生徒や友人が増えていくなかで明日葉君の存在はどれもあてはまらなかった。確かに明日葉君は大切な生徒だ。だけどそう思うと何故か胸の奥の方がもやもやして何か違うって思うんだ。明日葉君のそばにいると胸がキュッとなって苦しくなるし、そばにいないと明日葉君のことが頭から離れなくなった。目を合わせると胸がもっとギュッとなって苦しくなるようになった。だから明日葉君と目が合わせられなくなったんだ。その行為がそれだけ明日葉君を悩ませていたのなら、本当にごめんね。でも、これは明日葉君を避けてとった行為じゃないことは分かってほしい。」
先生は本当に申し訳無さそうにそう言って俯いた。
「先生・・・」
先生にも理由があったわけで、なによりも避けられていたわけじゃない、ということが僕を心の底から安心させた。
「そういうことなら僕、もう気にしてませんから。だから、顔をあげてくださ・・・」
そっと先生の頬に手を添えて顔を上げようとすると、僕の手が頬に触れた瞬間、先生は顔を赤くして軽く身を引いた。
(あれ、これってもしかして・・・)
「先生?」
「あ、ごめん。別に明日葉君を避けたわけじゃなくて、なんていうか、その、心臓が爆発しそうなくらいドキッてして・・・」
(やっぱり・・・これは・・・)
「大丈夫ですよ、先生。」
僕が先生に笑みを返すと、先生はとてもホッとした顔をした。
よく考えてみれば分かることだったのだ。
友達もいなかったような先生が自分の中にある恋愛感情に戸惑わないわけがないのだ。
「先生が気持ちを伝えるのが苦手なように、僕も自分の気持ちを人に伝えることが苦手で・・・お互い不器用だったんですね。だから、みんなみたいに上手く距離がはかれないんです。」
「明日葉君?」
僕はそっと先生の頭を胸に抱えるようにキュッと抱きしめた。
「いつか、先生に僕の人生の中で一番の悩みを聞いてもらいにきます。」
「今じゃダメなのかい?」
「今はまだダメ、です。」
僕の言葉にあからさまに肩を落とした先生に思わず笑みが零れた。
「今はダメだけど、絶対に先生に話します。先生がもし僕に感じた気持ちの名前に気付いたら、その時は必ず。」
僕は先生のその感情がなんなのか分かるけど、僕が教えたら意味がない。
だから、早く気付いて?
あなたのその感情の意味を、僕の気持ちを。
「先生、いつか今こうして僕が先生に抱きついているみたいに僕と先生の気持ちが繋がったらいいですね。」
「・・うん、そうだね。」
先生が頬を染めてそう言った言葉はきっと嘘じゃないと思うから。
きっと近い未来にそれは叶うと僕は思う。


僕とあなたの気持ちがいつか0距離になった時
それはきっと僕が世界で一番幸せになれる瞬間なんだ



おまけ~鏑木真哉~
「あ〜あ、好きな人をずっと見ている分、好きな人の好きな人に気付いちゃうのってなんだか切ないなぁ。」