きらきら光る
「…どうだ、トシ」
ただ見ていることに飽きて、近藤は声を上げた。
「ああ、悪くねぇ」
悪くない、は土方なりの褒め言葉だ。それを聞いて、近藤は「そりゃ良かった」と笑った。
土方は刃の水気を払うように一振りすると、近藤の横へ戻ってきて座った。回廊に置かれた道具箱を開け、早速刀の手入れを始める。
新しい刀は余程土方の気に入ったようで、手入れをしながら何度も掲げては眺めている。土方が刃を傾ける度、太陽の光が反射して近藤の頬を照らした。
「良いのが見つかって良かったな」
言って、近藤は回廊にごろりと寝そべった。
久し振りに二人揃っての休みは、もう半日が過ぎている。冬の太陽は頭上高く上がり、もうしばらくすれば西日のような色を放ちながら落ちていくだろう。初冬とはいえ風も吹かなければ春のようにぽかぽかと暖かい。土方の横顔を見ているうちにだんだんと眠くなってきて、目を閉じうとうとし始めると「近藤さん」と呼ばれた。
「…うん?」
「寝るなら部屋に入れよ。風邪引くぜ」
心配そうな声に促され「うんうん」と頷くが、動くのが面倒臭い。
「近藤さん、聞いてるのか」
「うん、分かってるけどトシ、もうちょっとだけ」
眠たくて動けない、と訴え、少し黙った土方にやがて叱られそうな気がして、寝返りを打って背中を向けた。しばらくして、カチャリと小さく鉄が鳴る音が響いた。コトリと回廊に刀を置く音。キシ、と小さく回廊の板を軋ませて土方が立ち上がり、歩いて行ってしまう。
怒ったか…。
半分寝惚けた頭でそう思った。だが去って行ったと思った足音がすぐに戻ってくると、近藤の身体にふわりと羽毛布団が被さってきた。微かに煙草の匂いがして、土方の布団だと気付く。
「…トシ…?」
頭だけ少し起こして振り返ると、土方がまた元の場所に座って刀を取り出しているのが見えた。
「ちょうど布団干そうと思ってたんだ」
土方は気が無さそうに言って、また太陽に刃を翳した。きらきらと反射した光が土方の白い頬を照らし、土方が眩しそうに目を細めた。近藤はまた寝返りを打って、土方の方へ向いた。土方は近藤の視線に気付いたように首を傾け、唇の端を上げるようにして笑った。
「冬の日は落ちるのが早ぇからな。二時間したら叩き起こすぞ、近藤さん」
それから柔らかい声で「おやすみ」と言った。