冬篭
言い方が素っ気無いだけで、土方が自分に対して冷たいわけではない。そう分かっているがなんだか寂しくなった。別に、にっこり笑って「じゃあ一緒にいよう」などと言って欲しいわけでもないが…勝手にしろと言われるとそれはそれで悲しい。
たまに二人重なった休みの日なのに。
「急に黙るなよ、近藤さん」
立ったままの近藤を見上げ、土方が煙草の煙を吐き出して言った。畳の上に横たわり、腰から下は炬燵に隠れている。灰皿と、お茶の乗った漆器の盆だけが顔の近くに置かれていた。近藤が持ってきた蜜柑は炬燵の上に置いたまま手を付けようともしない。
「座れば」
仕方なさそうに促され、炬燵に入る。胡座をかいた爪先が、土方の素足に触れた。土方がそれに気付いて「冷たいな」と言った。
目を伏せ、白い指先で摘んだ煙草を灰皿に押しつけて消すその仕草に見惚れる。今、あの指先に口付けたら煙草の苦い味がするだろう。
「…俺は用事も無いのに寒い中出かけて行きたいなんて思わないね」
最後の煙を天井に向かって吐き出しながら土方が言った。
「こうして炬燵で丸くなってるのが一番良い」
「それじゃあ猫と一緒だ、トシ」
呆れて言うと、土方はそんな近藤をちらりと流し見て笑った。炬燵の中の爪先が近藤の腿を誘うように撫でた。
「猫で結構。庭を駆け回るより、こっちの方が楽しいさ」
そうだろう近藤さん、と囁いた唇に誘われるように口付けた。
「昼間から不健康だ」
炬燵の中で土方の素足に触れながら言うと、「何を今更」と笑われる。
「折角休みなんだ。一日ゆっくりとしよう」