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雨音

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雨音をじっと聴く。夜が明けてきた。
 目が覚めた頃はまだ暗かった空は白んでいき、薄く開いた障子の隙間からゆっくりと流れていく灰色の雲が見えた。
 雨は少し前から降っては止み、降っては止みを繰り返している。風が吹けば時折強く廊下を叩くその音が気になり、眠気が訪れないままもう半刻経とうとしていた。寝ようと思えば余計に目が冴えてしまう。
 思えば子供の頃、明け方目を覚まして眠れなくなることが良くあった。狭い部屋が妙に広く感じて、見慣れた天井の染みさえ恐ろしく思えたものだ。
 そんなことを、懐かしく思いながら枕に顔を伏せる。視界を暗くしてみても眠気が訪れることはない。また顔を傾けて、溜息を吐く。
 すると、不意に頬に触れるものがあった。薄暗い部屋の中で、土方の瞼に触れ、確かめるように頬に、そうして唇に辿り着くと悪戯に唇の端に指先を突っ込んできて引っ張る。
「…どうした。眠れねぇのか」
背後でもぞもぞと動き出した熱が、土方の体を巻き込むように腕の中へ抱いて引き寄せる。肩口に近藤の顎が乗り、その固い髭が皮膚を擽る感触に、土方は肌を粟立たせた。
「…いてぇよ」
「ん?」
「髭が、痛い」
近藤の顎を押しのけ、文句を言う。近藤は「すまん」と低く謝ると身を乗り出してきて土方に口付けた。
 背に重なってくる熱い身体。ぐいと体重をかけられ、鬱陶しく重いはずのそれに安心してしまうのは条件反射のようなものだ。
「…今日はもう、無理だぞ」
太腿に触れた熱を感じ、告げる。近藤は少し黙っていたが、しばらくして「じゃあ」と声を上げた。
「…子守歌を歌ってやろうか」
良いことを思いついたとばかりに明るい声で言うので、思わず笑ってしまう。
「いい、いい。アンタの歌なんか聴いたら余計眠れねぇよ」
「なんだ。下手だって言いたいのか?」
「そうじゃねぇ…それよりももう暫く、そうやって抱いててくれないか」
アンタの腕の中ならば、あの神経を研ぎ澄ませる雨音さえも、心地良く聞こえるから…。
 近藤の腕に頬を押し付ける。近藤の大きな手の平が土方の髪をくしゃりと撫でた。
「せめてさ、俺の傍では休めよ、トシ…」
作品名:雨音 作家名:aocrot