脇役の意地
綺羅星十字団もその役目を負え、組織の見直しが迫られていた。
現在、組織改変を進めているおとな銀行の代表の命令で、
電気棺がまず第1に撤去対象となった。
撤去理由には、もっともらしいものを言ってきた。
「第4フェイズに進んだせいで、電気棺がガラクタとなってしまったわ。
置いてるだけでも、維持費がバカにならないし、フィラメントの部隊で処分してくれないかしらぁ」
とのことだった。まったくあの女!電気棺の良さを全くわかってやがらない。
俺は怒りの矛先を壁におもいきりぶつけた。ちょっぴり拳から血が出たが、さして問題ではない。
「なぁ?そう思うだろ。テツヤ?」
「上の命令だからな。俺達は言われたことをただやってればいい。そこに疑問を持つ必要はない。
後、ここではスピードキッドだ。レイジングブル」
「テツヤ!いや、スピードキッド!お前までそんなことを言うのか!
忘れたのか!電気棺は男のロマンであることを!!
思い出せスピードキッド!!熱くほとばしるあの電気棺のワクワク感を!!」
「さっ撤去始めるぞ~」
スピードキッドがハンマーを大きく振りかぶった。
「ちょ、まてよ。まてって」
俺はすかさず、彼の腕を掴む。
「お前も撤去されたいのか?レイジングブル」
「やれるもんなら、やってみろ!!」
「なら、ご希望どおり。あっそ~~れ!」
「ちょ!降参!降参!」
「なぁ・・・。せめて!せめて!一回!一回だけでいいんだ!もう一度だけ、電気棺に乗らせてくれ」
俺は恥をしのんで、土下座をした。
「仕方ねぇなぁ・・・。一回だけだぞ。後、終わったら、次は俺だからな」
「やっぱお前も乗りてぇんじゃねぇか」
「いいから早く乗れよ」
俺はスピードキッドに蹴られるように、電気棺の前に立った。
大きく深呼吸する。
「開け!!!デンキヒツギイイイイイィィィィ!!!!!!!」
最高だ。この言葉を言いたかった。
俺は電気棺の中に入り、昇降エレベータを駆け登る。
操縦席にたどり着くと、俺は満足が行くまで、何度も何度も「アプリボアゼ!」と言いつづけた。
何時間くらいこもっただろうか。
気が付くと俺は電気棺から無理やり降ろされ、
おとな銀行の代表と他の幹部数人が俺の周りを取り囲んでいた。
そして、皆から攻められ、共犯していたはずのスピードキッドからも、なぜか攻められた。
だが、攻められたことは苦にはならなかった。
なぜなら俺は、やりたいことをやれたのだから。
あの少年、確かタクトとか言うやつも、似たようなことを言っていたような気がしたな。
そして、俺は真の旅立ちの日を迎えたのだった。