寒い冬の
「先輩ずるい」
一瞬、何のことかわからず首を傾げる。視線の先を見やると、左手に提げた紙袋に辿り着く。
「ああ、クラスの女子が何人か配っていたんだ」
「僕も欲しいです」
頬を膨らませてむくれる後輩に苦笑する。
宥めるように頬を親指で撫でる。
「じゃあ、うちにくるか? 私もこんなにたくさん食べられないから、一緒に分けようか」
途端に後輩の目が輝く。鼻歌を歌い始める彼は、遅れてきた先輩を待たずに楽しそうに出口へ向かう。
家に帰るまでにある途中のカフェでホットチョコレートでもついでに買って帰ろうか。
嬉しさを素直に表すお気に入りの後輩を、せっかくのバレンタインだからと理由を付けて、もう少し甘やかしたくなった。