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プライベート・レッスン

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◆ 『天然みかど注意報』 シリーズ・番外編 ◆

   ◇ 静帝と愉快な仲間たち ◇ 闇夫婦編

タイトルから想像する内容とは、およそ掛け離れた話である事は確か。…どうしてこうなった(痛)


 『プライベート・レッスン』


 セルティの招待を受けて、帝人と一緒に岸谷宅を訪ねてみれば、静雄を待ち構えていたのは、何故か《講習会》と銘打った、ありがた迷惑な個人授業への強請参加だった。

(なんだ、この羞恥プレイ…っ!)

 居た堪れなさに耐え兼ねて席を立とうとする静雄を、伸ばした《影》で搦め捕って強引に座らせ直し、セルティは居丈高な態度でその眼前にずいとPDAを突きつけた。

『えぇい、往生際の悪い!すべては帝人の為なんだぞ?』

 おまえも男なら、潔く観念して、新羅の《特別講義》をきちんと受けろ!と、連打したPDAで一気に捲くし立てるセルティの熱血ぶりに、いささか閉口した静雄が横目でちらりと新羅を見る。

「ねぇ、静雄くん…。一体どんな“罰ゲーム”なんだろうね、コレって…」

 隠し切れない哀愁を全身から漂わせて、新羅は乾いた笑いを虚ろに零した。

『新羅は、人体の構造を熟知しているからな。医者からの専門的なアドバイスは、有益になりこそすれ、決して聞いておいて損は無いと思うぞ』

 帝人が大事なんだろう?と、最も効果的なセリフで説き勧められてしまっては、尚も無駄な足掻きを続ける理由など、ベタ惚れ男の静雄には残されていよう筈がない。

「あ、あの…僕は、静雄さんと一緒に、新羅先生の講義を受けなくても良いんでしょうか?」

 『帝人は、私と一緒にリビングの方へ行っていような』と、退室をうながす“自称・お母さん”を見上げながら、当惑気味に尋ねた帝人の頭を、セルティはあやす様に優しい手付きでぽんぽんと軽く叩いてから、素早く打ち込んだPDAの文字を、帝人と静雄の両者に見せた。

『おまえには、房事(ぼうじ)の予備知識は必要ない。あとで静雄から、直接レクチャーして貰え』

 表示画面を見て、房事って何だろう?と小首を傾げている帝人の背中をやんわり押して、セルティはいそいそと軽やかな足取りでドアへと向かう。
 そうして、開けた扉の前でやおら振り返り、何事かを書き足したPDAを《影》を伸ばして静雄と新羅にかざした後、彼女は一切の未練なく“息子”と共に閉ざされた扉の向こうに姿を消した。

 かくして、講師(新羅)と受講者(静雄)の二名だけが、侘しく部屋に取り残される。

「絵理華くんには、純真無垢な僕のセルティに、あまり偏った知識を植えつけないでくれと、再三再四お願いしてはいるんだけどねぇ〜」

 げんなりした声調でしみじみと零した新羅の呟きに、お節介な世話好き妖精を、見当違いな使命感に駆り立てた《元凶》が、門田とつるんでいる黒尽くめのオタク女にあった事を推断する。

(今度、門田に会ったら、身内はちゃんと躾けとけ!と、一言文句を言ってやろう…。)

 苦情の矛先が、狩沢本人に向かわないのはご愛嬌だ。
 理不尽を被る門田には迷惑千万だろうが、話の噛み合わない疲れる相手と、積極的に言葉を交わしたいと思えるほど、静雄は物好きな性格ではなかった。

『新羅の指導不足が原因で、万が一にも静雄が、鎮痛解熱剤や下痢止めや傷薬の軟膏を処方するような目に、帝人を遭わせたら、私は絶対に“おまえ達”を許さんからな!』

 男前な態度で勇ましくそう宣告して部屋から出て行ったセルティは、今頃リビングで帝人と楽しく、母子水入らずの《家族ごっこ》に興じているのだろうか。

(…つぅ〜か、並べ立てられた処方薬がやけに具体的だったのは、全てあの女の入れ知恵かっ!)

 一体どんな状況を想定しての医薬品のセレクトなのかと、PDAを見て絶句した静雄が、身の置き所のない羞恥と葛藤している間に、まんまと帝人を連れ去ったセルティに、悪気が一切なかった事は、新羅に取り成しされるまでもなく、静雄とて承知している。
 だから、容認するのは甚だ不本意だったが、母性愛の暴走ゆえの“親心”と思えば、辛うじて今回の度を越した過干渉も、甘受できない事も無かった。

「まぁ、君にしてみたら、『小さな親切大きなお世話』って所なんだろうけどさ。男同士の場合、普通の男女の営みとは、何かと勝手が違うのは確かだからね。ここは一つ、寛容な精神をもって、彼女達が設けてくれた“学ぶ機会”を活かしてみたらどうだい?」

 困った事に、君が閨房(けいぼう)での行為を失敗すると、僕まで連帯責任を負わされて、セルティの不興を買ってしまうんだよね。折角、僕の医療知識を彼女が高評価してくれたのに、信頼に添えなかったら、恋人失格ってものだろう!――と、愛しのデュラハンが願うのなら、幼馴染み相手に身も蓋もない《個人授業》の講師を務める事さえ、全く厭わない姿勢を誇示する新羅を、静雄は少しだけ「見上げた奴だ」と感心した。

「さて…とりあえず、帝人君の体調に留意してあげる為にも、君に気遣って貰うべき前準備と後処理の注意点だけは、軽く押さえておこうか。前立腺って単語は、聞いた事あるかい?」

 医師の顔をして真面目に講義を始めた旧友に、諦観の境地で抗議を断念した静雄だった。

   * * *

 専門知識(?)は手に入れた。後は押し倒した帝人に、直接レクチャーするだけだ!(〜けど、天然みかどが相手の場合、それが何より難しい…。)
 悪意なきムードぶち壊し攻撃をめげずに躱して、根性で最後まで成し遂げろ、静雄!!

作品名:プライベート・レッスン 作家名:KON