赤ずきんアンディ続き
狼役のリカルド。
赤ずきん役アンディ 狼役リカルド
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赤ずきん役アンディが、狼役リカルドに尋ねる。
「……どうしてそんなに大きなお口なの?(棒読み)」
「……それは、おまえを食べるためだ!」
ベッドに横になっていたリカルドが、言うなりアンディの腕をつかんで引っ張り、もともと顔を覗きこむようにしていて不安定だった体を自分の上に倒れさせる。
どさっ。
リカルドの胸に顔を押しつけるような形でアンディはベッドの上に倒れこんだ。
すかさずリカルドはアンディの手首をとらえ、頭を押さえ、体をずらして自分の体の下にアンディのきゃしゃな体を誘い込む。そしてしっかりと身動きができないように体で押さえ込んだ。
ギリッと手首を握りしめ、頭を支えていた手を首にずらして引き寄せ、白くて細いのどをむき出しにさせる。
パサリ……とフードが落ちた。ふわっと金色の髪が踊る。
「っつ……」
手首の痛みか、体勢のせいか、苦しげに眉をひそめて目を細め、薄く開いた唇を震わせるアンディ。
そのむき出しになった白いのどにリカルドが唇を当てる。すう……とそれをすべらす。ゆっくりと。
ビクリと小さな体がはねる。
リカルドは口元に薄い笑みを浮かべて静かに言った。
「……おまえの声を聞いて、においをかいで、全部食べてやる。……安心しろ。心ごともらってやる」
はい、カットカット。
キザです、キザ。ありえない。笑えます。誰?
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猟師役のバジル。
赤ずきん役アンディ 猟師役バジル
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*都合により未然に助けられた場合。
(食べられるのを防いだという意味)
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「バジル……」
ごくっと息をのみ、じりっと後ろに下がるアンディ。
「おいおい、アンディ。なんだその態度は。助けてくれた心優しい猟師に対して失礼だろ? おまえのピンチを救ってやったんだぜ、俺は」
ニヤリと笑って言うバジル。
「お礼が欲しいな」
ベッドの上から急いで降りようとしたところを、バジルに止められる。
どさっ。
再びベッドの上に投げ出される。
すぐにバジルはその上に覆いかぶさり、両手首をつかまえて、顔を近付ける。
強い意志の光を放つ目と、目が合う。
「……ボクは汚いんじゃなかったの?」
「嫌いだとは言ってない」
両手首をアンディの頭上でひとまとめにし、改めて苦痛に歪む顔を見下ろす。それでもその目はキッと変わらずバジルをにらみつけている。バジルは舌なめずりをした。
「その目だよ……その目だ。いつだって自分は正しい、おキレイだって面してやがる。だが、アンディだってしょせん俺と同じ汚い人間なんだよ。それを俺が思い知らせてやる」
ガッとシャツに手がかけられ、下から乱暴にめくりあげられる。そのシャツで、ひとつにまとめていた手首を縛った。そして、肌に手が這わされる。
「今度は俺がおまえをめちゃくちゃに壊してやる……!」
はいはい、カットカーット。
濃い……。
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おばぁ(兄)さん役のウォルター。
赤ずきん役アンディ おばぁ(兄)さん役ウォルター
*都合によりふたりとも助けられた後。
*****
「……アンディ」
ぷるぷると細かく震えているアンディの背中に声をかける。
「……」
「……おい、アンディ」
ウォルターはあきらめずにまた声をかける。
震える体から声が出た。
「……のどなめられたし、なんかののしられたし、上着脱がされたし、そのうえ……!」
ううっと低くうめく。
がばっと両手で顔を覆い、その間から声を震わせて言う。
「そのうえ……!!」
ウォルターはそっと近寄ってアンディの頭を自分の方に引き寄せた。
やさしく抱きしめる。
「……よしよし、アンディ。かわいそうにな。俺がついててやれればよかったのに……」
アンディがキッと顔を上げる。
「……もう、誰も信じない」
「え?」
「当然、ウォルターも信じない」
「ええ?」
「その証拠に、なんか当たってる」
「えええ?」
ウォルターが慌てて身を離す。その隙にサッとアンディは距離を取った。
自分を確認してそれが嘘だったことに気付いたウォルターが怒って言う。
「俺はまだ何もしてないのに!!」
「……あ、『まだ』って言った」
アンディが嫌そうに目を細め、さらに離れてゆく。
「やっぱり信じらんない。駄目。無理」
「アンディ……誰が一番の狼か教えてやる!!」
ウォルターはやけになって両手をあげてアンディに襲いかかる。
「がおーっ!」
バシーンッ……!!
赤ずきんちゃんのカゴ(カバン)がウォルターの顔面に命中した。
はいはいはい、カット!
いい目は見ないウォルターさん。
(おしまい)
作品名:赤ずきんアンディ続き 作家名:野村弥広