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(いとを)
(いとを)
novelistID. 40219
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日常運転

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突然何者かに薄暗い道に引き摺りこまれ、反応できないまままるで布切れのように身体を勝手に振り回された。
強かに打った背中は一度のバウンドを許し、壁に押し付けられる。一瞬、呼吸を忘れた。その位圧倒的な力に押された帝人は友人のもやし発言を思い出す暇もない。
カツアゲかと身を縮めて相手が動きをみせるまでコールドの態勢。目を瞑り、暴力に備えている帝人に反して上から言葉が降ってきた。

「ねぇ君って何なの?」

その声には聞き覚えがあった。
今は若干の凄みがあって普段の飄々とした声色でなかったが、「臨也さん?」ときょとんとした瞳で帝人は臨也を見上げた。
胸ぐらを掴まれているのに、だ。警戒心がないのかバカなのか。薄暗い場所でも臨也の目は捉えられた。不愉快だとばかりに細く睨みつける。

「何なの?質問を質問で返さないでくれる?それに名前を聞く必要が今ある?っていうかさぁいちいち名前呼ばないでくれる?ここんとこ、俺の優秀な頭の片隅に君がタダで居座っていて非常に不愉快なんだよね。帝人くんのせいで仕事が捗らないわ、シズちゃんをうまくかわせなくて怪我しちゃったわでもう滅茶苦茶。おまけにこんな天候でいやになるよ。もちろん、責任取ってくれるんだよね?」

言っていることが滅茶苦茶だ。
とはいえ、存在自体が滅茶苦茶な彼に何を言っても無理だろう。今もなお、いかに帝人が自分にどのような影響を与え毎日を過ごしているか、臨也はつらつらと話す。止まらぬ口に帝人は呆気に取られるが、相手が知り合いだということで冷静になってきた。
相づちやましてや頷きすら求めていないらしい臨也の言葉は早口でもはや頭に入ってこない。それよりも、と帝人は肩から下げたカバンの肩掛けのヒモをぎゅと握りしめた。

だってだって!顔が近い!!

鼻先が時々かすめる距離にある。背中はひんやりとした壁。この際制服が汚れるという懸念はするべからず。出来ることなら壁にめり込ませて距離をとりたいと帝人は願うほどだ。
こんな整った顔。間近で見るのは初めてで。普段、身だしなみに疎い帝人でさえ臨也の全てが美しいと思う。そこらの雑誌は修正をかけたモデルばかりだという。毛穴の修正から光の調整まで何から何まで手が加わっていると。下手したら外科的なものまで修正がかけられていると。だから綺麗な人なんていないのだと思っていたが、いた。
こんな目と鼻の先に。臨也さんが息継ぎをする度に空気が揺れ、吐息が唇に触れる。

二次元から飛び出してきたような男がまだまだ足りないと未成年を路地裏に引っ張り壁と自身の腕で作った檻の中で距離を詰める。
いくら友人に「お前はぼんやりしすぎているから横断歩道が青に変わるのを待っている間、ひったくりに遭わないか心配だよ」と言われている帝人でさえこの状況、臨也の真の主張が分からないはずもない。だのに、訴えている本人が理解している様子はない。
あくまで帝人が悪いひゃくぱーせんと悪い俺は被害者無実のスタンスを取っている臨也に何を言ったところで通じるわけがないだろう。
上手くまるめ込まれるのがオチだ。
しかし、臨也が常識を蹴って歩くような人間であれば、帝人は時に空気を読まない哀れな人間である。

臨也の言葉の意味を真に理解してしまった帝人がそれって告白ですか?と聞いてしまうまであと5秒。
告白と聞かれ、自身の発言内容を振り返り顔が真っ赤になる臨也が見られるまであと30秒。
帝人が臨也に変な事をされていると犬並の嗅覚で嗅ぎ付けた静雄が臨也に向かって自動販売機を投げるまであと40秒。
静雄の投げるあり得ないものをひょいひょいと避ける顔が赤い臨也を見て帝人が「暑いっていってたから風邪だったのかな。それにしても見てるこっちが暑いなぁ」とコートについて考えはじめるまで、あと60秒。

池袋は今日も日常運転。
作品名:日常運転 作家名:(いとを)