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羅生門-その後の下人

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それから下人は京都の町で多くの盗みを働いた。
盗みを働くのはいつも悪人と言われている者からだった。
少し良心が戻ったときには、あのときの老婆の話を思いだし
仕方の無いことなのだと自分を勇気付けた。

下人は何度も何度も盗みを続けた。
こんなに楽に物が得られるとなると止めたくても中々止められないのである。

ある雨の降る暗い夜だった。
その夜も下人は盗みを働こうと、ある一軒家を目指して通りを歩いていた。
ジメジメとした湿度の高い不快な夜だった。
河では蟇の鳴く声が聞こえる。
何故だか自分を嘲っている様で無性に不愉快だった。

目的の地に着き、裏口から中に入ろうとしたその時。
背後から急に見知らぬ男の声がした。
「何をしている。」
背筋を厭な汗が伝った。顔から脂汗が出る。息も忘れる。

その男は検非違使の庁の役人だった。
とうとう見つかってしまったと下人は今までの全てを告白した。
しかし最後にこう付け加えた。
「私のしたことは全て仕方の無いことなのです。
この有様を見てください、盗みをしなければ私は飢え死にしてしまう。」
その言葉も残念ながら役人の男には言い訳にしか聞こえなかった。

その後、下人はまた羅生門にいた。
今度は雨やみを待っているわけではない。
空はこれまでにないくらい、からりと晴れている。
しかしその空を羅生門の天井を通して見ようとする今の下人の眼に光は無かった。 
作品名:羅生門-その後の下人 作家名:crambon