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もかこ@久々更新
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novelistID. 3785
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眠りの浅瀬

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へへ、寝てる寝てる。
酔っぱらっちまった。
本当はいつも通り3人で寝るつもりだったんだけどな、
フランスとスペインとイギリスと喋ってたら、盛り上がっちまった。
あれ?でも、スペインは途中で帰ったんだっけ。
てゆーか、イギリスいつからいたんだっけ。
あいつほんとにバカで不幸な奴なのな、まだ日本のことが好きだとか抜かすんだぜ。バカだろ。
あいつはトルコの野郎にメロメロで、何かあるたびにサディクさん素敵過ぎますぅとか言うんだぜ、
しかもオタクだし。どうかしてやがると思う。
でもイギリスはどうもその事実が判らないらしくて、勘違いしまくっている。
日本はどうかしているが、イギリスは気が触れてやがるんだと思った。

「・・・・・・ぷー?」
「おっ。起こしちまったか、ごめんな」
「ううん、いい・・・・飲んできたの・・・・?」

眠そうな顔をして、イタリアちゃんが起きた。
目をこすり、軽くあくびをして。
あ〜あ、せっかく二人のカワイイ寝顔を見てたのによ。

「あぁ。だから、酒くせぇからよ。俺は今日は自分の部屋で寝るぜ」
「何でぇ・・・・?お風呂入ってくれば平気だよぉ・・・・」
「気にすんなよ。最近一人を満喫できてねぇからたまにはな」
「・・・・あ、そう・・・」

ぱったり倒れ込んで、目を閉じて。
イタリアちゃんはまた寝始めた。午前3時。
イタリアちゃんと、ヴェストが、二人並んで、寝息をついている。
可愛過ぎるぜイタリアちゃんと俺の弟!
そうそう、前から、こうしてヴェストの寝顔を見ながら、晩酌してたっけ。
俺はいつもいつも戦いに明け暮れてて、まともにヴェストに優しくしてやっていなかったと思う。
今のヴェストの真面目さと健全な精神があるのは、オーストリアとハンガリーの力添えがあるからだ。
こう言っちゃ悔しいけどよ。どうしようもない事実だろう。
今ヴェストと、ヴェストの恋人を、昔みたいに見てるとは思わなかったけどな。

「も〜・・・・いつまでそうしてんのぉ〜・・・・気になって眠れないぃ〜・・・・」
「え、あぁ悪ぃイタリアちゃん。何でもねぇんだよ、ほんと。見てただけ。」
「何で?何で見てんの?」

あれ、イタリアちゃん、機嫌悪ぃ。
寝てたところを起こされたからか、眠そうな目をこすりこすり、俺をじっと見つめてくる。
可愛いなぁ。
不機嫌な顔も可愛いぜイタリアちゃん。

「あ〜っ、もう、俺の話聞いてる?
早くお風呂入って寝なよ、もう真夜中だよ、ねぇ、プー!」

イタリアちゃんが何事か宣っているのも無視して、俺は下のキッチンからウォッカを持って、もう一度部屋に入った。
イタリアちゃんがベッドに横になって、俺を見てる。
部屋のドアを開けた、薄いフットランプの明かりで、イタリアちゃんの大きな、ドングリみたいな目が反射した。
猫みてぇだ。
猫の目も、少ない明かりに反射して、その存在を知らせる。
氷と、お気に入りのグラス。
もう一度飲み始めようとする俺に呆れたのか、何も言わずにこちらを見ている。
きっと一瞬、ヴェストを起こしそうになっちまったんだろう。
いつ頃から使ってんだっけなぁ、あぁ、終戦した頃からか。
ロシアの野郎が「飲む?」とか言って、そうだよ、ウォッカ持って来やがったんだ。
あのとき、俺は諦めていた。
ハンガリーは相当に荒れていた。
誰も幸せじゃなかったんだ。
めんどくさいよね、女の子って。僕たちは国なのにさ、恋愛感情なんかであんなに荒れちゃって。
彼女、相当寝てないでしょ。突然叫び出したりして、姉さんが怯えてるんだよ。
僕のところに来ては、
・・・・・やめよう。
気分良く晩酌してるってのに、可愛い二人が俺の目の前にいるのに。
嫌なこと思い出してどうすんだ。
ウォッカだな、ウォッカがいけねぇな。

「・・・・俺もいつか、子供を育てたら、プーの気持ち、判るかなぁ。」

小さく、ぼそっと、イタリアちゃんが呟いた。
俺をじっと見つめながら、可愛い。

「ん〜・・・それは判んねぇな。俺だけかもしんねぇし、この趣味。」
「みんな同じこと言うよ。寝顔が可愛いとか、寝言で笑うとか、何そんなに見てんのとか思う。
オーストリアさんとハンガリーさんもそうだった。」
「お、あぁ、そう。みんなそんなもんか。」
「日本も、中国にしょっちゅうそのこと言われるって。」
「ぶはっ。まぁなぁ、あいつも長〜いアジアの歴史では短ぇ方だもんな」

可愛くて、守りたくて、でもうまくかまってやれなくてコミュニケーション取りにくくて、
俺たちは、眠っている安らかな顔を見て、俺は間違っていない、と安心したのかもしれない。
とにかく、好きだってことを伝えたくて。でも、さっぱりうまく行きゃしねぇ。

「もう寝ろ、イタリアちゃん。俺を一人にしてくれよ」
「・・・・うん・・・」

さっきから、イタリアちゃんの瞼は閉じたり開いたりを頻繁に繰り返している。
眠いんだろ、でも、久しぶりに子供の頃見た光景を見たから、知りたくなったんだ。
でも駄目だぜ。これは俺らだけの特別、特権だ。
可愛い俺の、守るべきものの寝顔。安らかな、俺の庇護下にあり安心しきった、その寝顔。
俺のがんばっている証。
それはやっぱな、実感しなけりゃ判んねぇよ。

「・・・お休み、プロイセン。早く寝てね」
「お休みイタリアちゃん、良い夢を。」

ようやく寝息を立て始めたイタリアちゃんに、安心する。
ヴェストは無意識的になのか、眠ったイタリアちゃんを後ろから抱きしめた。
多分な。イタリアちゃんより、ヴェストの方が俺の気持ちを理解しやすいと思うぜ。
さっきのウォッカ、中の氷は少し溶けていて、
でも、ツマミが最高だから、気にならなかった。
お休みイタリアちゃん、ヴェスト。
明日も、いつも通りの笑顔を見せてくれよ。
作品名:眠りの浅瀬 作家名:もかこ@久々更新