アリスマジック その1
もう1週間経っただろうか、元気いっぱいのあの娘がいなくなってから幻想郷も静かになってしまった。
最初は嘘なんだと思っていた、しかしそれは幻想から現実へと姿を変えていくのであった。
私は朝の食事を済ませ、外に出た。
空はこんなにも美しいのに、私の心はズタボロであった。
そして私は魔法の森の墓場へ向かった。
─霧雨魔理沙ここに眠る─
そう書かれた墓石には、たくさんの花や遺品、お酒なども置いてある。
「あら、アリスじゃない。毎日ここに来てるわね。」
「そう言うあなただって毎日きてるじゃない。」
私の前に現れたのは、博麗神社の巫女博麗霊夢であった。彼女は貧乏である中、毎日のように魔理沙に花を渡している。
「本当に魔理沙が亡くなってから幻想郷も静かになったわよね。」霊夢はそう言いながらほのかに笑っていた。
「ねぇ霊夢。」私は霊夢に話をかけた。
「何?」
「私はまだ魔理沙は死んでないと思ってる。あなたも本当はそう思っているんじゃないの?」
私の意見を聞いた霊夢は数秒黙っていたがやがて、
「ふふっ。あなたは本当に魔理沙が好きねぇ。でも、それはないわよ。彼女は死んでしまったの。」
私の意見を反対した霊夢の顔はどこか悲しい顔をしていた。
「じゃあ私、神社に帰らないと。萃香がまた泣いちゃうから。じゃあね。」と言って彼女は去っていった。
彼女が去ったあと私は泣きたいくらいに苦しかった。
そうか。もう魔理沙はいないのか。そう思うと、嫌で嫌でたまんなかった。
でも、私は信じている。なぜなら私は魔理沙が消えていなくなったのを見たからだ。
─あれは今から1週間前の出来事─
私は、魔理沙に会いに向かった。
すると、魔理沙の家の方からとある声が聞こえたのだ。
─私はその中には入らない。幻想郷からは出ていきはしない!!─
この声は確かに魔理沙の声であった。
私は走った。ひたすら走った。魔理沙に何かあったんじゃないかと思って走った。
「魔理沙っ!!」息が荒く呼吸するのも辛い中私はそう呼び続けた。
そして魔理沙の部屋へ入ると、信じたくない光景が広がっていた。
なんと、魔理沙が血を流して床に倒れていたのだ。
「魔理沙。魔理沙。しっかりしてよ。魔理沙。」彼女は答えてくれない。
しかし、息はあった。まだ生きていた。
魔理沙はしばらくして私に気がついた。
「ア、アリス・・・逃げろ。こ、ここはお前が来るところじゃない」声も小さく苦しそうにしているのがすぐわかった。
「でも、あなたを置いてくなんて、無理よ。だって私はあなたが・・・」
すると私の足元に黒い魔法陣が現れた。
「な、何よこれ。こんな魔法陣見たことない。」そうその魔法陣は幻想郷にはない複雑な形をしていた。
「アリス!そこをどけぇぇ!」魔理沙は必死な顔で私を叩いた。
もう彼女には力がなかった。完全に力尽きていた。
すると魔法陣は神々しく光り輝きだした。
私はただそれを見るしかできなかった。
「アリス・・・頼みがある。私が消えても・・・忘れないでくれよ・・・」その言葉は私に託された最後の言葉になった。
「魔理沙っ!魔理沙!いやっ消えないでよ。まだ話したいことがいっぱいあるのよ。お願い魔理沙!」だんだん魔法陣にす込まれていく魔理沙を私は必死に引っ張った。
しかし魔理沙の体は徐々に姿を消していった・・・
「魔理沙・・・私の大切な友達・・・行かないで・・・行かないでよ・・・」私は何もできなかった無力さと魔理沙が消えてしまった悲しさで泣いてしまった。
ただ、魔理沙の残された帽子の前で泣いていたのだった‥‥
「ねぇ霊夢。あなたはなんであんな嘘をつくのよ?」
「紫。だってアリスに本当のこと言ったら無茶をしちゃうわよ。」
「そうね。彼女のことを考えると無茶して死ぬよりはいいのかもしれないわね。」
「それで見つかったかしら?外の世界との境界線を。」
「ごめんなさいね。まだ何もわかってないわ。」
「一刻も早く見つけないと魔理沙がどうなるかわからないわ。これからもよろしくね。」
「はいはい。それにしても今日は良い夜になりそうね。星が綺麗だわ。」
「そうね。まるで魔理沙の魔法のような綺麗な星々だわ。」
「じゃあ。一緒に飲まない?」
「おお。ゆかりもたまにはいいことするじゃない。」
「ではいただこうかしら。」
「アリス。お帰り。」
「ただいま上海。」
今日も上海はたくさんの人形と家事をしてくれている。
「今日はこれからどうするの?」
「星を見ましょう。今日はとても綺麗だわ。」
外に出て、星を見た。
綺麗で感動した。でもなんでだろう。すごく悲しい。
魔理沙の事を思い出してしまう。思い出すと悲しくて悲しくて
今日は泣かないって決めたのにな。いくらそう考えたって無理なんだ。
だって私はずっと魔理沙が大好きだったのだから。
部屋には小さい頃の私と魔理沙の写真がたくさん飾ってある。
私を闇から救ってくれたのは魔理沙だった。いつも魔理沙だった。
それから、魔理沙を追いかけるようになった。そして、だんだんと好きになっていたんだ。
私の中から楽しかった日常が消えていく。
みんなも一緒だろう。そして、だんだん消えていく。
魔理沙の存在と思い出が。まるで紅茶に溶けていく砂糖のように・・・
朝になった。
目が覚めると私はリビングのソファーに座っていた。
きっと昨日外で寝てしまったのだろう。そこに上海たちが来てここまで運んでくれたのだろう。
私の隣で寝ている上海はとても優しい顔で寝ていた。いい夢でもみているのだろうか。
「ありがとう。上海。」
作品名:アリスマジック その1 作家名:ベント