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羅生門-その後の下人2

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それからの下人はというと、京都の町で多くの盗みを働く毎日を送っていた。
毎日毎日盗みを働き、下人の心持ちにはもう正義や良心などという気持ちは微塵もなくなっていた。

ある日、腹を空かせた下人はまた盗みを働こうとある店に行った。
雨上がりの真昼間だった。
店の前まで来ると下人はふと立ち止まった。
大きな水溜りだった。
水溜りを覗き込むと、そこにはついこの間まで頬のニキビを気にしていた下人とは
まるで別人のようになった一人の薄汚い死人のような男の顔が映っていた。

呆然とそれを眺めていると、
店の中から一人の老婆が下人に声をかけた。
「腹が減っているんじゃないかえ」
そう言われるほどに下人は死にそうな顔をしていたのである。
老婆は店から少しの質素な食べ物を抱えて下人のもとへ歩み寄った。
「これでも食べんさい」
下人は訳が分からなかった。
なぜ見ず知らずの自分に貴重な食料を分け与えるのだろうか。
下人は小さく礼を言い、それを口いっぱいに頬張った。
今までに食べたことのないほど旨かった。
そこで初めて下人は良心と正義の大切さが分かったような気がした。
なぜ今まで自分はそれを棄てて盗みなど働いていたのだろう。

それからというもの下人は一切の盗みを働いていない。
あのときの自分の行動を恥じ、一切を反省した。

もう一度羅生門の下に行ってみた。
空はとても良く晴れている。
雨が降りそうな気配などまるでない。
新しく心を入れ替えた下人は軽く跳ねるような足取りで京都の町へと歩き出した。
作品名:羅生門-その後の下人2 作家名:crambon