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Wizard//Magica Wish −10−

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俺は、夢を見ている。
けど、俺の見る夢は人とはどこか違う、「無」の夢だ。

常人の見る夢は、大抵が自分の脳裏に記憶した映像を夢として認識し、仮想空間という世界を体験する。
俺は違う。
俺の見る夢は、魔法少女達の絶望を夢として見る。

今まで、まともな夢を見れた試しがない。
自分一人残して皆が消えてしまう夢、何度も無意識中に自分が自殺する夢、意味もなくどこかへ落ち続ける夢…ようするに、俺は悪夢しか見ない。

あの日以来、俺は悪夢を見続けている。けど、寝ないと俺は自分の中に溜まっている穢れを消化することができない。グリーフシードでは吸い取れないんだ。

あぁ、今日は一体どんな悪夢を見るのだろう。
俺の目に映るのは、何もない、上か下かもわからない謎の空間。どこを振り向いても真っ黒で、自分が立っている感じすらない。


ははっ…なんだこの夢?
今まで散々悪夢を見てきたけど、こんな夢は初めてだ。


−…ついにここまできたな−


声が脳裏に響き渡る。
男の声だ。俺に向かって話しているのか?


−お前は、いつまで戦い続けるのだ?−


やはり、俺に問いかけているみたいだ。
だったら、返事をしてやらないとな。

いつか、全ての魔法少女が人間に戻れば良いなって思う。それまで俺は戦い続けるよ。


−自分自身を、滅ぼしてもか?−


俺か、俺は既に「絶望」している。俺は俺という個体を保てなくなるまで戦う覚悟だ。いまさら、誰に何を言われても、戦いをやめるつもりなんてないよ。


−なら良い。お前は、これからも、この先も戦い続けなくてはいけない宿命だ−


へぇ。てっきり止めるものかと…。


−止める?何故止める必要がある?お前は、自分の判断で戦い続けると決めているんだ。戦いを止める必要性なんてものはない−


まぁ、ごもっともな理由だな。


−どんどん戦え、どんどん魔法少女を人間に変えてしまえ、そうして俺は…俺はもっと強くなる−


…?なんだろうな、戦うのは俺自身であって、あんたが強くなる訳じゃないんだよ?


−それは違うぞ、操真 ハルト−


違う?一体何が。


−俺は、お前の魔力に比例して成長する。いずれ、俺はお前を取り込み、やがて俺は最強の存在へと変貌するだろう−


自我自賛もほどほどにしておきなよ?大体あんたは一体だれなんだ?姿ぐらい見せてくれても良いじゃん。


−その必要はない−


何…?

俺の目の前に、人影が映る。
次第にシルエットが明白になり、身体の付き具合や顔の輪郭がはっきりとわかってきた。…そして、俺は驚愕した。
俺の目の前に立っていたのは…。


−俺は、お前自身だからだ。操真 ハルト…俺は、お前だ−




・・

・・・

「…はっ!」
「お、起きたかハルト!…近づいてきたぞ、準備しろ」
「あっ…あぁ…」


作品名:Wizard//Magica Wish −10− 作家名:a-o-w