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水無瀬 綾乃
水無瀬 綾乃
novelistID. 2596
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視線

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一応見つめていることがバレないように時々視線を別の方向に移したりしている。

だが気を緩めてしまうと、ジッとあの方を見つめてしまう……









視   線














ちょっとした切っ掛けで互いの気持ちが通じた、あのとき。
まだ一昨日の事。
忘れられるわけもなく、思わず今日何度目かの溜息をついた。
昔からずっと、想いを寄せていた相手……
イギリスさん……
いや、アーサー=カークランド、さん……
私が見つめていることも気付かず、現在彼はアメリカさんの個性的な政策に棘を指していた。
それに加わった形でフランスさんが茶々を入れている。

(楽しそうですね……)

世界会議が開催されて1時間半。
既に某国国会議事堂はカオスと化していた。
ある国は商売を始め、ある国はシェスタ中。
そしてまたある国は内職に没頭……
と、大変賑やか且つある意味平和な会議が繰り広げられている。
こうやって私がボーっとしていても咎める者はいない。
だから会議が進む兆しが見えるまで、彼を観察することにした。


フランスさんに頬を突かれ、アメリカさんに馬鹿呼ばわりされいる風景を幾度となく見ていた私としては

(あの輪に入れたら、どんなに幸せだろう)

と、何度思ったことか。
あの方達と比べたら付き合っている年数が違うのだから、贅沢な話だとはわかっている。

「お前ら黙れぇぇっ!!」

いつもと同じ、終止符を打つのは殆どドイツさんの叫び声。
やはり怒気が籠った声だからか騒いでいる方々はいつもこの叫びで静かになる。
私も議会の内容とは別の事をしていたので無意識に身体が恐怖で硬直した。

「これでは埒が明かん……少し休憩だ。30分後に戻ってくるように。時間厳守だ。以上!!」

いつもながら疲れているのか溜息交じりに仕切る彼の眉間の皺がこれ以上増えないことを祈ろう。
30分の休憩。
そう言われてもすることがない私は、またアーサーさんの姿を探そうと視線を右往左往させる。

すると、さっきの場所に立っている彼を見つけた。
口論していた筈の2人は休憩と言われて別の席に移動しているらしい。
その場にはアーサーさんだけがいた。
視線をこちらに向けた……アーサーさんが。

こ、こっち見てるっ!

目が合うと急に恥ずかしくなり、音が出るかと思うほど顔が熱くなる。

どう反応を返せばいいのか……
顔を伏せたり横に逸らしたりと誤魔化してみる。
けれど、彼の視線は私から外れることはなかった。

見るのはいいが見られるのはとても……何と言いますか……
まぁ、気恥かしいといいますか……

挙動不審な姿を見せたまま終わるのも後味が悪いので、とりあえずニッコリと笑ってみる。
少しひきつったかもしれない。
すると、彼が大きな歩幅でこちらに回ってくるではないか。
何か失礼な事をしてしまったのかと慌てたが、そうしている間にも視線はそのままに近づいてくる。
そして、席についている私のすぐ横に佇む。

「い、イギリスさん?」

仕事場では国名で呼び合うことになっているので、「どうされました?」という意味も含め
疑問形で名を口にする。

「日本」
「はい」
「ちょっと付き合ってくれ」

そう短く呟くと私の腕を掴み、立たせて会議室を後にする。

「え、えぇぇ?」

他の方々の視線を一身に受けた中で、フランスさんのニヨニヨ笑う顔が視界の端に入った。

その笑みがちょっと不気味だが、今は構っていられない。
廊下を少し歩いる間、互いに何も話さなかった。
何をしでかしたかと思い当たる節を考えたが覚えがない。
それがまた不安を掻き立てる。
な、何を話せばよいのやら…
一つの扉のノブを開き、中に入るよう腕を引っ張られる。
足元が少しふら付きながら薄暗い部屋を見回す。
今使っている会議室より二回り小さい部屋は資料室なのか複数の本棚が並んでいた。
しかし、ここが何なのか確認する前にまた腕が引っ張られ、背中を壁に押さえられてしまう。

「い、イギリ…」
「アーサーだ」
「アーサーさっ……っん」

つい癖で名前を言い間違えてしまい言い直そうとしたが、終わる前に彼の唇で塞がれてしまった。
突然の紳士らしからぬ行為に驚きを隠せない。

「んんんっ」

こんな場所で
誰か来たら……と焦って彼の両肩を押しながら視線だけを扉に向ける。

あぁ、心配は無用のようだ。
ちゃんと閉められている。

けれど、こんな破廉恥な行為を続けられては堪らない。
どうにか剥がそうと試みるものの、やはり身長10cm差は大きいらしい。
ビクともしない。

その間も口付けは続き、段々と深みが増す。
何度も角度を替え、下唇を吸われ、舌先でくすぐるように舐められる。

「んっ……は、ぁ」

流石にあのランキングは伊達ではないらしい。
気を抜けば腰が崩れてしまう……
って、これって私たち始めての接吻では!?

初めてがこんなにディープなものでいいのでしょうか……

グルグルと酸素が足りなくなってきた思考回路で考えていると、やっと唇が解放される。
とても長い時間口付けていたような気がするのは私だけでしょうか。
えぇ、私だけでしょうね……


既に腰は砕けて一人では立っていられない。
幸いアーサーさんが支えてくれたので床に腰を打ち付けることはなかったのですが……

抱きついたまま放してくれません。
それどころか力が一層……

「……まえが…」
「はぁ、ぇ?」
「お前があんな目で見てくるから悪いんだぞ、ばかぁっ」
「え……ぇえええっ」

段々はっきりしてきた頭が、会議中のアレを思い出させる。
き、気付いてたんですか!?

「だって……そんな素振り」
「言っとくが……フランスも気付いてるぞ」
「フッフランスさんも!?」

さっき会議室を出る前に見たあの顔はそういう意味だったんですね……

もう…
あそこには戻れませんっ!!

茹で蛸のように真っ赤になっているであろう己の顔を下を向いて隠す。
渾身の力を振り絞りりアーサーさんを引き剥がすと、閉ざされている扉に向かった。

「もういいです!帰ります!暫く引きこもっ」
「そうはいくか!」
「うわぁぁっ」

腕を引っ張られたままの状態で背後から

「やっと恋人になれたってのに籠らせるわけには……」

なんて声が聞こえましたが……
もう頭が混乱していて気にする暇もありませんでした。

出て行く直前に腕を掴まれ帰宅することは許されず。
暫くその場に座り込む。


後ろから抱き締められている状態で。
密着したまま。
























「ふふ、あの2人も青いねぇ。お兄さんまで恥ずかしくなっちゃうよ」
「ん?何のことだい?」





【 END 】





作品名:視線 作家名:水無瀬 綾乃